87-sho side- ページ10
…
「検査したらさ、怪我と別に何か腫瘍があるって騒ぎになって。悪性か良性かすぐに検査するって言われて…」
「…しなかったんだ、検査。あの看板のおかげでバンバン仕事入り出してそんなんしてる暇なかったし」
「俺は絶対違うって思ってた、頭ん中では」
「だけど…」
「心ん中はやべーって、余計にAと別れなきゃって思って、沢山傷つけちまっただろうな…嘘ついて…別れたんだ」
『…今は、大丈夫なんですか？俺、聞いちまって…何か、佐藤さんがカメラ辞めるとか…』
"ぶはっ"笑い出せば
「そこはさ、お前には隠しときたかったのになぁ。元カレのプライドとしてさ」
「名刺が完全アダじゃん」
苦笑う
…
"悪性だったんだ…"
ぽつり、つぶやけば
後は何を話したかあまり覚えていない
症状が明らかになった時にはやはり進行してしまっていて
これから入院するって、何か、そんな話だった…
途方に暮れながら歩き続ければ
やっぱり思い出す
枕元に置いた小瓶を
柔らかな光に当てては七色に輝くビー玉をみて微笑む
母親の姿
体が弱くて、大病して、今も昔と同じ
寝室で過ごす事が多い日々
入院がちで今まで何度入院した事だろう
母親が決まって言うのは
"あんた達がいるから、生き続けられるのよ"
…そんな台詞
…
…アイツは？
彼女を手放したアイツの支えは？
母親を見てきたから痛いほどにわかる
病を抱える事、戦う事がどれだけ辛くて孤独で寂しくて
支えが必要か…
…
自分の為に身を引いたこと、知ったら迷うかな
俺が側にいると迷うよな、彼女らしく
…二人の"運命"に入り込んだのは俺だから
今度は俺の番だ
…
…
"あなたの笑顔、紫陽花みたい"
この瞬間だけは絶対に忘れない
俺と彼女の間に舞い降りた"運命"だから
それくらいいいよな…
それくらい…
溢れ出す涙はとどまることを知らずに
まるであの日のビー玉のような
大粒の雫が頬を伝う
君と出逢ってから俺の周りはいつも彩に溢れていた
君のいない世界はどんな彩をしているのか
無理やり涙を拭って歩き出す
"…さよなら"
まるでモノクロームの世界を一人
歩き始めたんだー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あや - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした。10年の間の日々の事や、れんくん達のお話など、短編でも良いので続編を書いて欲しいと思います。楽しみにしています。 (2019年3月11日 9時) (
レス) id: eabae93259 (このIDを非表示/違反報告)
?HANA?(プロフ) - 完結おめでとうございます！ ぜひ続編をお願いします！無理だけはしないでくださいね？！ (2019年3月7日 0時) (レス) id: 261760be67 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - この作品大好きです。続編楽しみにしています！ (2019年3月6日 23時) (レス) id: ad4e5580f7 (このIDを非表示/違反報告)
?HANA?(プロフ) - 更新お疲れ様です！ (2019年3月6日 20時) (レス) id: 261760be67 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - みなさん、ありがとうございます！！ (2019年3月6日 18時) (レス) id: ca8f5d0f58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kumatan | 作成日時：2019年2月7日 23時
