やわらかい風が吹いたら3-sho hirano-

72-sho side- ページ21

ーーー


〜♩


つい口ずさむ歌がある



廉「お前、またそれ歌ってるん？2番？聞いててせ

つないねんな」


し「あぁ、これ？…」





〜♩



君が抱いてた悲しみ 寂しさ もどかしさ




何にもしてやれなかったなぁ それが悔しかった




もっと大きな器で もっと優しくて




そういう僕なら君を救えたろうな




〜♩




廉「別れの歌なん？お前Aちゃんと上手く

いってるのとちゃうん？」



し「上手くいってるよ、何となく口ずさんじゃうだけで」



ーーー


…



「あの紫陽花畑Aちゃんが特別だって言

ってたのはあのカメラマンとの思い出の場所だった

からなんだ？」




「胸を張ってまた歩きたいのは、そいつの為…？」




A「違う、違うよしょうくん？」

"ちょっと聞い



遮るように続ける



「良かったじゃん、今回カメラマンで入って。…忘れられて…なかったもんな」


ヤバイ、とまらない



彼女の顔が曇る



いや、怒りだろうか真っ直ぐな瞳が刺さる








ーーー


閉幕し関係者に挨拶に回る



廊下の隅で機材を片付ける、雰囲気ある人に



挨拶しようとすれば



り「…お前、Aの男なの？」



聞き覚えある声に一瞬時が止まる



"A、立て！"



彼女を呼び捨てにしたその声だ




「…それが何すか」




り「…別に。じゃあ紫陽花んとこ行ったんだ？彼女

のお気に入りの」



「…」



り「あの看板、撮ったの俺なんだ」



り「君らデビュー待ちでしょ？現場一緒なること

あるだろうしこれ渡しとくね」



"じゃ、お疲れ"



…手渡されたそれには"プロカメラマン 佐藤凌"


説明なくともわかる


…彼女が想い続けていた男か



ーーー

「元カレが撮った写真に"一目惚れした"なんて、知

らなかったの俺だけか…」




「何が紫陽花だよ……俺みたい…なんだよ」




「あいつとの思い出の場所で、何が運命だよっ」






…


"パンッ"


頬の痛みに正気に帰れば




泣きじゃくる愛しい彼女




ゆっくり立ち上がれば




右足を庇うように走り去る




「…何やってんだ俺…」





「くそっ…」





…


星一つ見えない都会の空を見上げる




光が見えたと思えば



溢れる様に突然消える



こんな事言いたくなかった




拳に落ちる温かい雫がこんなにも






君を愛していると証明しているのにー

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