やわらかい風が吹いたら3-sho hirano-

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…


目を凝らす




その、センターで踊っていたのは




まぎれもなく彼で




気づいてからは固まりきってしまった




その様子に気づいた舞さんが



"大丈夫？緊張してきたかな？"



顔を覗き込み心配してくれれば





「だ、大丈夫です…」





焦りをポーカーフェイスに隠す





確かに




…ショーに出るって言ってたけど




…同じ日で被ってたけど




…数ある"イベント"の中で




…まさか、こんな事があるなんて




…やられた…




客席からこちらに手を振るゆりとゆりママの姿




"あのカップル…絶対知ってたくせに…"




ジタバタジェスチャーを送る




いたずらに笑うゆりを尻目に




気を取り直してステージを見れば




学祭で見たものとはまるでレベルが違う




"一生権懸命練習してたもんね…"

思わず呟く




その眼差しは真剣そのもので





まるで私の知っている彼ではないみたいだった




"自分の魅せ方を知っている"




学祭とは比べ物にならないこんな大きなステージで




体いっぱい表現する




そんな彼を見ていると





相変わらず泣きそうになる






…

爆音の終わりと共に彼らが動きを止めれば




もう、割れんばかりの拍手と声援




"れんー！" "かいとー！" "しょうー"……




黄色い声援が飛び交う





数万人の熱量が一体となり会場が湧き上がる





"パッ"





彼らから大画面が切り替わる



その瞬間




絶大な人気を誇るあのモデルを映し出せば





花道を歩き出す






"キャー！！！！！！"






彼らが作り上げた空気に彩りをのせて湧く





…ショーの始まりだ





舞台袖にはける彼を最後まで目で追いながら




負けていられない、そう思う








…


ふと、ゆりの方に目をやれば




涙を浮かべ愛しい人を思う




そんな彼女をも愛おしく感じてなんだか胸がいっぱいになる





…


さ「そろそろいこうか」


先程までとは顔つきがかわる






立ち上がり会場を一周みわたせば





静かに目を瞑る





さぁ、次は私の番ー

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