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市内の、駅直結の高層マンション。
そこの一室に、俺は叔父とふたりで暮らしている。
大学病院で医者をする叔父は仕事が忙しく、この家に滞在する時間はほとんどない。
だから俺は、この地上から遠く切り離された高潔な檻で、
「なあ」
誰にも邪魔されず、
「昼間、亮ちゃんとなに話してたん？」
真っ赤な麻縄と黒い首輪にきつく抱きしめられた白い裸体は、俺の手で、俺の腕のなかで、砂時計の砂が落ちるような速度で乱れていった。
しっとりと汗ばんだ肌が目の前で揺れる。
Aはふと、嘲笑のような笑みをこぼして、
「興味ないんじゃなかったの？」
「……」
「あなたのものでないときのわたしには」
興味がないわけではない。
"持たないようにしている"だけだ。
「教えて」
「……なぜ？」
「はよ。言うこと聞かへん子はきらいやで」
生意気な唇に噛みつきながら、その細い喉元に、右の手のひらを密着させる。
「べつに、予定を訊かれただけ」
「今夜の？」
「明日の」
「……会うん？」
「ええ」
彼女の壊れそうな手首には、もうすっかり縄の痕が染みついてしまっている。
絞められる首筋が苦しいのか、ほんのわずかに漏れきこえた喘鳴。
硝子のような目の奥が、不安定に揺らめいた。
ひとみを合わせたと同時に、鳴り響く着信音。
「出たほうがいいんじゃない？」
画面には、ミナコちゃんの名前。
「今日はもう、時間切れ」
Aは微笑む。
時計を見ると、時刻は20時をまわったばかり。
「ママが心配するわ」
.
一度、あんまり夢中になって、彼女を一晩帰さなかったことがある。
その日は叔父が仕事で東京に行っていて、家には他にだれも居なかった。
時計ばかりを気にする君と迎えた朝、君のスマホの画面を覗くと、おびただしい数の着信履歴が浮かび上がった。
相手はすべて、『ママ』
その後自宅に帰った彼女は、それからひと月の間、何度連絡をしても会ってはくれなかった。
「あの日の朝、家に帰ったら警察に囲まれたわ」
淡々と、彼女は説明した。
「外泊の連絡は入れていたけど、駄目だったみたい。ひと月の間、外出禁止だったの。あと、携帯電話の没収。
大学の登下校には、ママが毎日車を出したわ」
自由な時間が、なかったの______________
「…………ごめん」
俺は、つぶやくことしかできなかった。
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べに(プロフ) - ココナッツさん» ココナッツさーん！ありがとうございます！うれしいです！がんがん進めていきます笑 明るくない話ですが楽しんでいただけるようがんばりますね！^ ^ (2018年2月1日 11時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさん！待ってました！！新作の世界観に、はぁもうまたため息…やっぱり好きです！！続きを楽しみにしています！ (2018年2月1日 1時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年1月31日 16時
