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俺が彼女の存在に気づいたのは、高校に入学してすぐの頃、閑散とした図書室でのことだった。
図書委員会の当直の生徒以外、だれも居ない放課後の図書室の隅っこで、水色のブックカバーに包まれた文庫本に目を落とす女の子。
一目見てすぐ、似た類の人間だと思った。
正常な人間の位置をグラフで表すとしたら、０から大きく外れた座標にこそ、彼女は存在していたのだと思う。
異常性の濃い自分をうまく隠して生きている俺とは違って、君は、ありのままの姿でそこに居た。
でも、そのときは、それだけだった。
特に声をかけることも、彼女のことばかり考えて夜も眠れない！なんてこともなく、当然に時間は流れて。
君に本物の興味を抱いたのは、それから一年以上あとのこと。
「藤村！」
耳慣れた声が、聞き慣れない名前を口にしたことに、俺は無意識に反応していた。
授業の合間に訪れた他クラス、自席でスマホを弄る亮ちゃんに声をかけようとしたところで、目に入ったのは見知らぬ女の子に話しかける章ちゃんの姿。
……いや、それは、
「藤村、ちょっとええ？」
あのときの図書室の女の子。
席替えのくじ引きなのか、いくつもの棒線が引かれた紙を差し出す章ちゃんの顔を、凍りついたような無表情のまま見上げる君の唇が、
「……わたしはどこでもいいわ」
まるで繊細な硝子細工を金属で叩いたような、そんな透きとおった声をこぼした瞬間、全身の肌が粟立ったことを、今でもよく覚えている。
その日から、
俺は彼女のあとを尾けてまわった。
君の行動はいつも一定で、代わり映えがない。
休み時間は自席で、昼休みはベランダで。
日中は、常に独りで居る。
それは放課後もおなじで、授業が終わるとすぐに帰宅の用意をするか、図書室で本を読むか、教室で虚空を見つめて過ごすか______________
「ねえ」
監視をはじめて何日か経った頃、
彼女を追いかけて入室した図書室で、ふと目を落としたスマホの画面に夢中になっていると、
「それ、わたし？」
背後で、あの、とうめいな声がした。
我にかえったときには、すでに遅かった。
君の目は、俺の手のなかの電子機器の、写真フォルダいっぱいに保存された画像を見つめていた。
画像はすべて、君を隠し撮ったものだった。
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べに(プロフ) - ココナッツさん» ココナッツさーん！ありがとうございます！うれしいです！がんがん進めていきます笑 明るくない話ですが楽しんでいただけるようがんばりますね！^ ^ (2018年2月1日 11時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさん！待ってました！！新作の世界観に、はぁもうまたため息…やっぱり好きです！！続きを楽しみにしています！ (2018年2月1日 1時) (レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年1月31日 16時
