夜中、月の下 ページ4
『もしもし』
「…どうしたの、こんな夜中に」
特に用事があったわけじゃないんだけどね、と小さな声が聞こえる。
そっけないふりをしたけれど、久しぶりに彼女からかかってきた電話に胸が弾んで、眠気も吹き飛んでいた。
電話越しのいつもと少し違う声がくすぐったい。
この向こう側に彼女は確かにいるのだと思うと、自然と口角は緩む。
…らしくねー。
まぁ、それが幸せなんだけど。
『なんか、声、聞きたいなーと思って…』
「……」
『…り、亮？なんで黙ってるの』
「別に」
『答えになってないよ！？』
…別に。
これだから無自覚は困る。
その言動ひとつにどれだけ気持ちが揺さぶられているか、なんて考えたことないのだろうか。
騒がしい声に思わず携帯を耳から遠ざけた。
色々喋っているから適当に返事をする。
『ねぇ、亮』
「んー？」
『外見てみて。満月だよ』
落ち着いた声色になったAに言われた通り、カーテンを開けてベランダに出てみた。
この季節、夜はまだ少し肌寒い。
ぽっかりと、空に穴を空けたように真ん丸な月が浮かんでいた。
『…綺麗だね』
「うん。…ちょっとクサい台詞だけど」
『ふふ、いいじゃん』
離れていても、同じ月を見上げている。
同じ景色を共有できている。
それが嬉しくて、大袈裟かもしれないけれど感動でもあって。
「A、好きだよ」
『…っ、私も好き』
普段こっぱずかしくて言えない言葉だってスラスラと言える。
それからどうでもいい話をして、気付けば二時間経っていた。
『…亮、そろそろ切るね』
「ん、分かった」
『……』
「A？どうしたの？」
『…寂しいなーと、思って』
ぼそりと呟かれた声で、なぜか鼻の奥がツンとした。
「…俺も」
素直にそう返すと、ふふ、と寂しそうな、でも嬉しそうな笑い声。
「夜遅いんだから、もう早く寝なよ。おやすみ」
『うん。おやすみ』
＿ありがとう
最後にその声を聞いた後赤いボタンを押して、携帯の画面は真っ黒になった。
耳鳴りがするような静けさに包まれる。
同じ月を、今も見ているのだろうか。
普段は何とも思わない東京の明るすぎる夜景が、不思議と今は心地よかった。
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜！今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです！更新は、どうか気長にお待ちください！(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (
レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます！ご指摘の部分は全て修正したと思います！苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です！紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました！更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが｡｡｡ (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2021年4月11日 21時
