○ ページ20
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『先輩は、ずっと好きな人いるんですか』
「うん、いる」
酔っぱらいとは思えないはっきりした口調に、恋ってすごいな、とぼんやり思う。
同時に胸の奥が、冷たい風が吹き付けた後のように、なぜか虚しくなった。
「高校時代からね」
『長っ！』
ね、長いんだよ、と先輩は笑ってジョッキを傾けた。
机は結露で、そこだけ丸い形に色が濃くなっている。
高校時代からなら、吉沢先輩と付き合っていると噂されていたあの先輩だろうか。
「俺、結構アピールしてるつもりだったよ。下の名前で呼んでる女子とかその子だけだったし」
『へー、じゃあ周りの人にバレてそうですね』
「ん、もう完璧に把握されてた」
なんだか情けなくて笑ってしまう。
笑うなよ、と軽く睨まれた。
「部活同じだったし連絡先も交換してたのに、俺が卒業してから全っ然連絡くれないの」
『なるほど』
「なんでなんだろ。ね、A？」
…ん？
なに、この感じ。
やけに強調して名前を呼ばれた。
目が合うと、視線が捕まえられてもう逸らせなくなる。
先輩の二重の幅とか、鼻のほくろとか、ちゃんと見たことがなかったものを発見して、呑気に顔の造形に感動していた。
「お前は本当に鈍いねぇ」
『なに、そのおばあちゃんみたいな喋り方…』
ちょっと顔こっちにやって、と急に言われて素直に従うと、両手が延びてきて顔を挟まれる。
しかも結構な勢いで。
何ですか、と文句を言いかけて、目の前の先輩の顔に口をつぐんだ。
「…Aだよ」
『…え？』
「ずっと好きだった。もう何年も前から」
＿時が止まったかと思った。
もう力の込められていない、添えられただけの彼の両手が震えている。
…どうして、この人は。
泣きそうな顔でそんなことを言うのだろうか。
その想いはきっと、私には大きすぎるのに。
『いっつも、突然ですね…先輩は』
先輩が驚いたようにこっちを見ている。
滲む、あなたが。
ポタ、という音で気づいた。
『…なんで、私が泣いてるの？』
一気に押し寄せる波のような、この感情の正体が分からない。
ぐ、と涙が指で拭われる。
…分からない。
触れられた頬が、目元が、熱い。
「それ、嬉し涙？」
困ったように笑う彼が、また輪郭を失っていく。
嬉し涙。
その一言が、あまりにもしっくりきた。
…そっか、分かった。
『…はい』
私はずっと、この人に恋をしていたんだ。
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜！今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです！更新は、どうか気長にお待ちください！(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (
レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます！ご指摘の部分は全て修正したと思います！苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です！紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました！更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが｡｡｡ (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2021年4月11日 21時
