【HSJ】Happily ever After…？ (ページ49)

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【招待状】を受け取ってから数日。
あまりにも住んでいた世界とはかけ離れていて、まるで異世界のように思えた空間も今ではすっかり馴染んで僕の一部になっている。
それを喜ぶべきなのか、悲観すべきなのかは分からない。

もちろん、世間的にはよく思われないことは分かっている。
実際にここに居る人達の持つ【呪い】の力は、世界に災いをもたらすものばかりだ。
けれど彼らには、そうしなきゃいけない理由があった。

つい先日聞いた光さんの話がフラッシュバックする。
もし光さんの功績が他の人に横取りされなければ、彼は悪魔と契約を結ぶことは無かったかもしれない。
今もカナリア国で世界のために有益な研究をしていたのかもしれない。

東の空がだんだん明るくなって夜が明ける。
ゆっくりと歩き出して、渡り廊下の先のバルコニーへ出る。

そこには雄也が用意してくれたであろう、簡易的なテーブルと椅子がある。
何も持たずにゆっくりとそこに座る。
朝日が僕の視界を染め上げていく。

こうして世界は今日の始まりを告げるのだろう。
何故だかこの景色を目に焼き付けておかないといけないように思えた。
何故だかこの景色を忘れてはいけないような気がした。

休息を取ることを忘れて、睡魔さえ吹き飛ばしてしまうほど僕は緊張しているのかもしれない。
突如カレンダーに現れた【8】の数字。
それは僕を指す、僕だけの数字。

──怖いんだろう、本当は。

違う。僕は何も怖くなんかない。

──いつか自分の愛したブーゲンビリアを傷つけるかもしれないことが、怖くて仕方ないんだろう。

違う。僕が本当に恐れているのはそんなことじゃない。

──お前が本当に恐れているのは、自分自身が傷つくことだ。

……僕が傷つくこと？

僕は、一体何に怯えているのだろう。

裕翔のように永遠を彷徨うような【罪】を背負うこと？

雄也のように全ての【呪い】を引き受けること？

宏太のように一族から存在ごと消されてしまうこと？

涼介のように【罪】に抗うことなく苦しむこと？

光さんのように信じた人から裏切られること？

伊野ちゃんのように憂いを心の中で隠して生きていくこと？

大貴のように自分の全てだったものを剥奪されてしまうこと？

その全てが恐ろしいのに、そのどれもが僕にとっては他人事のようだった。

この広大な屋敷には全てがあるのに、僕の探している答えはどこにも見つからないように思えた。