【HSJ】Happily ever After…？ (ページ34)

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「……！」

現実の光さんは変わらず立っているのに、鏡の中の光さんは一歩横へと歩き出す。
あまりにも非現実な現象に、言葉を失って立ち尽くす。

「ああ、なんだ……紹介するよ、俺の【相棒】だよ」

光さんは驚くことなく、まるで当然のように鏡の中の意思を持って動き出した自分を紹介する。
ここで起こることは全て受け入れると覚悟したのに、どうしてもそれが理解できなかった。

「あ、相棒……？」

「そう。俺の【呪い】は、この鏡の中に住む【悪魔】との契約で成立するんだ」

「悪魔……？それじゃあ、この塔には本当に……！？」

裕翔の言う、悪魔の住む塔とは例え話ではなかったのだ。

「この【悪魔】は気まぐれだけど、何でも出来る、どんなことでも知っている。まさに俺にはうってつけなんだよ」

「うってつけ、ですか？」

「何でも分かるのさ。この世界のことなら、何でもね」

「じゃあ、僕たちがここに来ることも、全部……！」

大正解、と光さんは満足そうに言った。
悪魔だなんて、【呪い】にはそんな力も存在するの……？

「何でも出来るんだ、この【呪い】はね。それに、それを実行するのはあくまでも俺じゃないから、【代償】は支払わなくていい」

「だから、今も……」

「そう。話が早くて助かるよ。けれどまあ、【悪魔】と契約していることに対しての【代償】は発生するんだけど、それはまた別の話ってことで」

分かるかな？と聞く光さんの後ろでは、自由に鏡の中を歩き回る【悪魔】の姿。
何でも出来る。
それはつまり、雄也が使っている魔法のようなものと似たような意味なのだろうか。

だとすれば、何らかの方法でアネモネ国に大打撃を与えた。
どんな方法を使ったのかは分からないが、話を聞く限りではきっと方法なんかいくらでもある。

「……それなら」

「山田が行かなくても良かった、って思った？」

考えていたことを言い当てられて、ドキッとする。
嫌な汗が伝うような感覚。
あまりにも的確な指摘に、身動きが取れなかった。

「それは【呪い】のルールだからね。詳しくは省略するけど、今に分かるよ」

ああ、この人は悪魔よりも悪魔的かもしれない。
全知全能がゆえに、何でもお見通しなのだろう。

それが、このクラウド邸の敷地内のことであっても。
僕の心の中であっても。

あまりにも人間離れしたその力に、鏡の中の彼は笑っていた。