【HSJ】Happily ever After…？ (ページ4)

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「いかがでしょう。お気に召しませんか？」

「いえ、むしろ驚きました。こんなにも自室と瓜二つな空間が存在するなんて」

「喜んでいただけたようで何よりです」

「配置してくださったのはどなたでしょうか？後でお礼に伺わなければ」

ただでさえ装飾やものが多いのに、これほどまで完璧に再現できるなんて思わなかった。
いくら陛下の有能な使用人とはいえ、初めて来る人間を見透かしているかのような空間。
人は、感動を飛び越えると恐怖を感じる生き物のようだ。

「お気遣い感謝致します。ですが、そのお気遣いは無用でございます」

「……と言いますと？」

「この屋敷には使用人はおりません。全てクラウド家の魔法で賄われております」

「……！？」

この莫大な敷地を全て魔法で管理している…！？
そんな現実離れした話が本当だというなら、僕はとんでもないところに招待されてしまったのかもしれない。

「ふふ、驚かれるのも無理はありません。皆様そうでしたから」

「……いえ、陛下のことですから…」

「ですが実質的にここを取り仕切っておりますのは恐れ多いことに、この私ですので何かご要望がございましたら遠慮なく仰ってくださいね」

「ということは、この屋敷の魔法はすべてあなた一人で？」

「ふふ」

柔らかい微笑。
彼のその【裏側】に秘められた感情がまったく読み取れなかった。
それなのに彼の方は僕の恐怖をたった一瞬で射貫いてしまったかのように思えた。
それが何よりも恐ろしかった。

「各国にも魔法は存在しますが、魔法を使うことが出来る人間は限られておりますから」

「クラウド卿は僕の想像しているよりも、ずっと優れた魔法をお使いのようですね」

「お褒めに預かり光栄です。このクラウド邸はこの大陸で一番魔力が強い場所です。それゆえに【外の世界】ではありえない魔法も使用できるのです」

「……つまり、この屋敷の中だからというわけでしょうか？」

「ええ。流石は知念様。呑み込みのお早い方です」

いくら魔力が強い場所だからと言っても、これほどの大きな屋敷を使用人なしで運営できる魔法なんて聞いたことがない。
それを頭では理解できても、気持ちが受け入れることを拒む。

「それでは私はこれで失礼致します。本日は長旅でお疲れでしょうし、ごゆっくりお休みください」

「お気遣いありがとうございます」

「何かあればいつでもお呼びください」

そう言い残して彼は部屋を後にした。