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──恐れろ、そして受け入れろ。
内側から聞こえる声。
それが誰のものなのか、思い出せない。
ずっと聞いていたはずの声。
懐かしいような気もするし、そうじゃないような気もする。
曖昧なその声の正体は、どれほど時間が経っても思い出すことは出来そうにない。
「……」
今度は自然と意識が引っ張り上げられるような気がして目を覚ます。
いつも始まるのは、この同じ僕の部屋だ。
「……そうだ、涼介!」
勢いよく起き上がると、そこには雄也が居た。
「おはよう、って言っても、もうそんな時間じゃないけどね」
「……雄也?僕さっきまで涼介のところに居たはずじゃ」
「そうだね。でも強制的に部屋に連れ戻させてもらったよ」
さっきまで何が起こっていたか、鮮明に思い出せる。
涼介の部屋で起こったこと。
それが現実のものであることは、雄也の黒いブーツが証明だ。
「ありがとう」
「え……?」
「僕をここまで運んでくれたんでしょう?」
笑ってお礼を言う僕を、雄也はどこか眉を顰める。
何かまずいことを言ってしまったのだろうか。
気分を損ねてしまったのなら、謝らないと……。
「もしかして僕、何か……悪いことをしてしまったのかな?」
「俺がここに連れ戻したのは、【主様】の意向だよ」
「……クラウド卿の?」
「そう。【他言無用】の領域へ、一歩踏み込もうとしたね?」
真っ直ぐな雄也の言葉が、心に突き刺さって痛かった。
彼は核心を突くような言葉を発するけれど、それが僕には何を指しているのか分からない。
それがもどかしくて、何だか責められているような気がして。
「……ごめんなさい。出過ぎた真似をしてしまったみたいだね」
「いや、謝ってほしいわけじゃないんだ。ただ……説明をしなかった俺も悪かったから、その……」
お互いに歯切れの悪い言葉同士。
どちらかが口を塞いでしまえば、この世界に音が消えてしまいそうなか細さだった。
「……山田のあれは、【呪い】の【代償】なんだ。だから、俺たちは触れることは許されない」
「……【代償】って」
裕翔の言葉を思い出す。
彼の【代償】は年を取ることが出来ないというものだった。
それに対しては、涼介のあれは随分とまた形が違うものだ。
「【代償】はその【呪い】の力と引き換えなんだ」
「引き換え?」
「そう。裕翔はこの世界のあらゆるものの重力を自由自在に操ることができるよね?」
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作者名:天凪 | 作成日時:2022年6月21日 23時