【HSJ】Happily ever After…？ (ページ24)

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「……もしかして、マルベリー国の王家……」

「うーん、一応……そうだけど、でも、そんなのもう誰も気にしないよ？」

やっぱりそうだ。
名前を聞いた瞬間に閃いた。

そう、たった一瞬の間にペリドット国とマルベリー国。
二つの国の王族と出会ってしまった。
そして裏を返せば、二つの国の王族が、それぞれの【呪い】を受け継ぎこの空間を共にしている。

「薮ならともかく、俺は兄弟も沢山だし王位継承権もかなり下だし……でも、そういう風に思ってくれる人がいて嬉しいよ、君は優しいんだね」

「優しい、だなんて……そんなこと」

優しいと感じているなら、それは見かけに騙されているんだ。
誰かに優しくしているのは、他人には優しく接しなさいと躾けられたから。
僕の意思とは関係なく。

「もしかして、二人はここでお茶でもする予定だった？邪魔なら部屋に戻るけど」

そう言いながら、彼の片手に持たれた本。
きっとここで読書をしていたことが窺える。

「いえ、僕は裕翔に屋敷の中を案内してもらってるだけなので、お邪魔なのはこちらの方です」

「あ、そうだったんだ」

「なので、これで失礼します」

「気をつけてね。いくら魔法の力があるとはいえ、ある程度屋敷を把握しておかないと迷子になっちゃうよ？」

「大丈夫だって伊野ちゃん！俺、もう見飽きるくらいこの屋敷のことは理解してるからさ！」

「……まあ、裕翔に任せれば平気なんだろうね。それじゃあ気をつけて。また会ったらお話ししようね」

そう言って彼はまた本の中の世界へと引き戻される。
僕たちはそれを邪魔しないようにそっとテラスから出た。

まるでここが国中の人々から恐れられているとは思えないほど陽気に晴れた空。
そして優しくて暖かい住人たち。
あまりにも穏やかな時間は、僕がここに呼ばれた理由を忘れてしまいそうになる。

「あの建物はまるまる全部図書館になってるんだ。何でも揃ってるから、暇があれば本を読むのも面白いかもね！」

「何でも？」

「うん！……って言っても俺はあんまり読書は好きになれなかったから、ほとんど用事はないんだけどね」

「へえ……」

そうしてまた長い渡り廊下を抜けた先。
そこに見えてきたのは、他の建物より一際高い塔だった。

「一つ忠告しておくと、あの塔には立ち入らない方が身のためだよ」

「どうして？」

「あそこには、悪魔が住んでるからね」