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「……その話が本当なら、君はもうずっと130年もの間ここに…？」
「そうだね。怪我しても高木くんがすぐに直しちゃうし」
「この先も、ずっとここに……？」
「そうだね。この世界が無重力にならない限り、俺の時間は止まったまんまだから」
くつくつと笑うのは、まるで悪戯が成功した子供かのようで。
きっと130年前に、まだ幼さの残る姿のまま時を止めてしまったんだ。
「もっと正確に言うと、重力を操っている間は時空の影響を受けないっていうのが俺の【代償】なんだけどね。でもどっちでも同じことだよ」
「だったら、永遠にここに……？」
「そうだね。誰かから殺されない限りはここに、ね」
「……そんな」
「誰か俺の最後に終止符を打ってくれる人が居ればいいんだけど、なんてね」
彼の数字である【1】が不変であることにも納得できる。
僕がここに呼び寄せられたのは、先代のブーゲンビリア国の【呪い】が消えたからだ。
その消えたという表現にも、いくつか可能性はある。
寿命が尽きて死んでしまったか。
あるいは何者かに消されてしまった。
または【呪い】の力に飲み込まれてしまった。
考えられる理由はたくさんあるが、どちらにせよその理由を聞くのはここでのルール違反に当たる。
「でも寂しくはないんだよ。みんな遊んでくれるしね」
「みんな……？」
「そう。それで知念。君は、一体どうやって【遊ぶ】の？」
双眸が僕の姿を的確に捉える。
さっきまでの笑顔がまるで嘘に思えるほど冷たい目がそこにはあった。
怖い。
油断していた。
130年もの長い年月をここで過ごしていることに変わりはなく。
きっとたくさんの数の【呪い】を見て来たに違いない。
それを全て見て来た彼の目に、僕はどう映っているのだろう。
──恐れろ。そして、受け入れろ。
気味の悪い声が内側から喉を突き破りそうになる。
怖い。
その恐怖に飲まれてしまったら、戻れなくなってしまいそうで。
それは僕の本能がそう反応している。
だから、大人しく笑う。
「ごめんね。ここでの遊び方は僕は分からないんだ。だから、全部教えてほしいな」
その言葉に彼はフッと警戒心が解けたのか、まださっきの友好的な笑みを浮かべる。
「そっか。ならいいや。これからよろしくね」
差し出された手を取る。
これで、僕は完全に【こちら側】だ。
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作者名：天凪 | 作成日時：2022年6月21日 23時
