garden ページ15
その夜、部屋に戻ってベッドに横たわっていた。
見上げる天井も、今まで見ていたものと全く同じで、まるで最初からここが僕の部屋だったと思わざるを得なかった。
全てが体にぴったりと張り付いてくる感覚。
それが気味悪く、けれどどこか懐かしい。
そんなおぞましい安心感が、漠然とした今の僕の全てだった。
あれから、この広すぎるクラウド邸を雄也に案内してもらった。
けれど到底一回では覚えられそうにない部屋の数で、地図を貰ったものの把握出来るまでは時間がかかることだろう。
その後は雄也と2人で食事をとって、またこの部屋に戻ってきた。
窓の外はすっかり日が暮れて、初めての夜がやって来る。
この屋敷は街から離れた場所にある。
もちろん格式高いこの屋敷に一般市民が立ち入ることを防ぐことも目的のひとつだろう。
けれどそれ以外にも目的はある。
ここに集う8つの【呪い】を外に持ち出さない為だ。
「……」
何も掴めない手を虚空にかざして、グッと握りしめる。
僕のこの手にも【呪い】の力が間違いなく宿っている。
ここに招待されたことが何よりの証明だ。
分かっているのに、まだ実感が沸かない。
雄也も涼介も、優しい人だからこんな中途半端な僕を歓迎してくれる。
でもいつか僕にも、この身に宿された役目を果たす時が来る。
ゆっくりと寝返りを打つ。
環境が変わったから、眠れないだけだ。
何の違いもない自分の部屋にそう言い訳を放つ。
──考えることを恐れるな。
内側から囁く声。
ここに来てから度々聞こえるこの声は、僕の【呪い】なのだろう。
この身に宿ったそれが、内側からじわじわと僕の退路を断つ。
・
・
「……」
ゆっくりと視界が明るくなって、暗くて深い場所から意識を引き上げられる感覚。
それが目を覚ました合図だと気づいて、目だけを動かして状況を確認する。
変わり映えのない部屋。
違わなければいけないはずなのに、それらははっきりと僕の形をしている。
いつの間にか夜は明けていて窓の外はすっかり明るくなっていた。
時計は午前8時を少し回ったところ。
昨日はあれこれ考えている間に時間が経って、結局ほとんど眠れなかった。
最終的に眠れたのは深夜というよりは明け方という方が正しかったはずだ。
ベッドから身体を起こし、カーテンを開ける。
その僕の目に、衝撃的なものが飛び込んできた。
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作者名:天凪 | 作成日時:2022年6月21日 23時