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「自分の番号?」
「うん。部屋に書いてあったでしょ?それが自分の番号になるんだ」
「……てことは、僕は8番?」
「そうだね。一応説明しておくと、番号には意味はないからね。ただここに来た順番に振られたものだから、気にしないで」
来た順番。
彼の言葉を頭の中で反芻する。
ということは、八つしかない国の八番目。
僕が来た時点で、全ての国の【呪い】がこのクラウド邸に集まっている。
「……その番号は、何を意味するの?」
カレンダーに記された数字。
一番近い日で明日。
明日の日付に書かれた数字は【4】と【5】。
この数字に匹敵する人物のみが、敷地の外に出ることを許可される。
「俺は4番だから、明日が担当の日なんだ。もう一人が5番だから、光くんかな」
「……外に出ることは分かったけど、一体何をするの?」
そう聞くと、涼介は透き通る視線でじっと僕を見た。
涼介の瞳の中で怯える僕の影が揺れる。
そうして彼の唇は恐ろしくも美しい弧を描く。
「もちろん、この世界に【罰】を与える為に……ね?」
「……【罰】?」
「そうだよ。知念もここに来たってことは分かるでしょ?」
「待って。どういうこと?どうして僕たちが【罰】なんて……」
まるでこの大陸を治めるクラウド卿の影武者とでも言わんばかりだ。
僕たちが処刑執行人のように振る舞うことがこの屋敷に来る条件なら、僕は引き返すには遅すぎる。
「他人が憎い。他人が怖い」
「っ……」
「そういう風に感じたこと、あるんでしょう?」
「僕は、そんなこと」
机の下で握った手に力が入る。
それが何よりの肯定の証だということに、僕はまだ気付けない。
けれどどこかでそう思っていたのかもしれない。
ずっと、僕は誰かを憎んでいたのかもしれない。
「……うーん。分からないなあ。雄也、この子の【呪い】は一体何?」
「俺も詳しいことは聞かされてないんだ。まだ【呪い】が開花してから時間も経ってないしね」
「ふーん……」
「何か気になることでも?」
「いや、読めないんだ。他の人の心は、はっきりと見えるのに。なのに知念の心だけは微塵も揺れない」
涼介の双眸が真っ直ぐに僕の滲んだ輪郭を捉える。
「僕は、何も……」
──本当に、何もなかった?
内側から聞こえた声に、声にならない悲鳴を飲み込む。
手が震える。
もう、僕の手を取ってくれる人はこの世界にはいないのだろうか。
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作者名:天凪 | 作成日時:2022年6月21日 23時