誰を頼りもしない ページ10
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その日以降私は先生を避け続けた。あれだけ愛した彼の顔を見ると、芋づる式であの女の人の姿が浮かび、そして彼らが営みをする光景を想像してしまうのだ。反吐が出そう。あの女性には嫌悪感しか湧かないのに、それでも京本先生のことは未だ好きなのだ。もしかしたら今抱いている愛は代替品で、かつて積み重ねた気持ちを捨てるのが勿体ないと思っているだけなのかもしれない。
それでも愛してしまう。これはただの依存だ。
「文化祭の出店何にするかみんなで考えてー」
「はーい！」
また暗黒が私の視界を遮断し始めるくらいの月日が経った九月末。文化祭はすぐそこまで迫っていた。現在私の後ろの席を陣取っている森本は、あの日から私への過保護が増したようだ。毎日の送り迎えから移動教室にも付き添い、テスト勉強や休みの日もともに過ごすことが多くなった。やっていることはその辺のカップルと同じなのに、私と彼の関係には未だ名前がなかった。
クラスのリーダー格の女生徒がテキパキ話を進めていく。そういえば一学期は彼女に前髪を切られたんだったな、とどうでもいいことを思い出した。一見頼りがいのある明るい女の子だ。外面だけは良いんだな、と感心した。
「じゃあうちのクラスの出し物は縁日で決まりでーす！」
騒がしい教室内で子ども用プールが家にあるからヨーヨー釣りのために持ってくるとか、かき氷機は幾つ必要とか、早速展開していく会話に置いていかれる私。森本だけが寄り添ってくれた。
「女子はみんな浴衣着ようよ！ マストで！」
待ってよ、勝手に決めないで。なんて言えるほどみんなとの関係値は高くない。正直嫌だし夏は過ぎたのに浴衣なんて寒いじゃん。あからさまに不服そうな私の表情には誰も触れやしなかった。つんつん、と後ろから肩を啄かれて振り向けば、期待に満ちた目で森本が私にお願いを一つ。
「俺、Aちゃんの浴衣姿見たい。それで当日一緒に校舎回ろ。ね？」
何であんたなんかと、って前なら跳ね除けたはずなのに。この半年間で私は随分彼に絆されたみたいで、気が付けばいいよ、なんて肯定していた。それを聞いた彼ったら、大型犬が尻尾を振っているようにしか見えなくて思わず笑ってしまう。
森本といると自然と笑顔になることが増えた。彼といる時だけは普通の女子高生でいられた。友達の少なさも、これまでのつまらない人生さえも、忘れることが出来た。
あの人への依存さえなくせたら、このまま幸せになれるのに。
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セナ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後まで文章に独特な雰囲気が漂っていて本当に魅力的な作品でした。私の語彙力では上手く伝えられずもどかしいです（ ; ; ）執筆お疲れ様でした。他作品の更新も応援しています！ (2022年6月18日 20時) (
レス) id: e1d06a1912 (このIDを非表示/違反報告)
たあ子(プロフ) - ちきちき丸さん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^) 心の揺れ動きは意識して書いた部分でもあるので気付いて頂けて嬉しいです！また数多くの素敵な言葉でほめて頂けて感無量です。拙作を読んでいただきこちらこそありがとうございました(><) (2022年6月18日 17時) (レス) id: 6b46a490a0 (このIDを非表示/違反報告)
ちきちき丸(プロフ) - とても素敵な作品でした…！繊細な心情描写とお話の構成が大好きで、読んでいてお話の中に引き込まれるような、とても良い映画を見たような、そんな感覚がしました…。この作品を読ませていただけたことがとても幸せです。ありがとうございました…！！ (2022年6月17日 21時) (レス) @page14 id: 1487e65024 (このIDを非表示/違反報告)
たあ子(プロフ) - セナさん» はじめまして、コメントありがとうございます。私もセナさんの作品拝見しておりましたのでそう言って頂けて嬉しく思います(^^) 文章にも着目して頂けてありがたいです、、、応援頂けると更新も頑張ろうと思えます！ ゆっくりにはなりますが、気長にお待ちください(><) (2022年6月16日 6時) (レス) id: 6b46a490a0 (このIDを非表示/違反報告)
セナ(プロフ) - 描写が丁寧で話の進み方が自然で、本当に本屋で売られている文庫本を読んでいるような感覚がします…！とにかくこの作品が大好きです。更新、大変だとは思いますが応援しております…！ (2022年6月15日 22時) (レス) @page12 id: e1d06a1912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たあ子 | 作成日時：2022年6月13日 18時
