儚い ページ16
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風は冷たい。凍てついた私の精神とよく似ている。高い場所にいると、この身に受ける寒さも倍増しになった気がするのは私の思い過ごしかな。終焉に相応しく、柵の前に靴も揃えてみたりした。書き置きなんてものは残さない。今更ここに縋るのは至極みっともなくて悔しいから。
心が壊れたから、いなくなってみることにしたんだって。誰にも言えないまま、ここまで来てしまった。
「……これじゃあどうなるか分かんないな」
髪が靡けば、久しぶりに視界がクリアになる。最後の最後まで臆病だった私には、五階建てくらいの高さからで精一杯だった。何が、なんて言うまでもない。
「約束、すっぽかしてごめんね」
踏み出した一歩は空を切るだろう。今の私を体現したような空っぽに進むのは嫌だったから、せめてもの抗いで後ろを向いて両手を広げる。背中から空虚にもたれかかって、重力に身を任せて後退することにした。
少しづつ意識が薄れていって、過去の記憶が映画のエンドロールみたいに頭の中を流れていく。親の顔、昔仲が良かった友人、その中にあの人の顔はなかった。
あんなに時間をかけて先生を愛し続けたはずなのに
『Aさん、どうしたの』
『Aさん！ 楽しい！？』
『……Aちゃん、おいで』
『ずっと、待ってるから』
どうして脳裏を過ぎるのは、森本の顔なんだろう
愛する者同士は寄り添い、綺麗な言葉を囁き合う。街を彩るイルミネーションが気持ちの後押しをして幸福を招いては彼らに笑顔を与える聖なる日。
そんな12月25日の美しい夕方
神様が生まれた日に、彼女は儚く散った
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セナ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後まで文章に独特な雰囲気が漂っていて本当に魅力的な作品でした。私の語彙力では上手く伝えられずもどかしいです（ ; ; ）執筆お疲れ様でした。他作品の更新も応援しています！ (2022年6月18日 20時) (
レス) id: e1d06a1912 (このIDを非表示/違反報告)
たあ子(プロフ) - ちきちき丸さん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^) 心の揺れ動きは意識して書いた部分でもあるので気付いて頂けて嬉しいです！また数多くの素敵な言葉でほめて頂けて感無量です。拙作を読んでいただきこちらこそありがとうございました(><) (2022年6月18日 17時) (レス) id: 6b46a490a0 (このIDを非表示/違反報告)
ちきちき丸(プロフ) - とても素敵な作品でした…！繊細な心情描写とお話の構成が大好きで、読んでいてお話の中に引き込まれるような、とても良い映画を見たような、そんな感覚がしました…。この作品を読ませていただけたことがとても幸せです。ありがとうございました…！！ (2022年6月17日 21時) (レス) @page14 id: 1487e65024 (このIDを非表示/違反報告)
たあ子(プロフ) - セナさん» はじめまして、コメントありがとうございます。私もセナさんの作品拝見しておりましたのでそう言って頂けて嬉しく思います(^^) 文章にも着目して頂けてありがたいです、、、応援頂けると更新も頑張ろうと思えます！ ゆっくりにはなりますが、気長にお待ちください(><) (2022年6月16日 6時) (レス) id: 6b46a490a0 (このIDを非表示/違反報告)
セナ(プロフ) - 描写が丁寧で話の進み方が自然で、本当に本屋で売られている文庫本を読んでいるような感覚がします…！とにかくこの作品が大好きです。更新、大変だとは思いますが応援しております…！ (2022年6月15日 22時) (レス) @page12 id: e1d06a1912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たあ子 | 作成日時：2022年6月13日 18時
