運命のエウレカ《緑》 (ページ1)

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「なんで？」
「だ、だから、俺」

息を切らしながら彼が放ったその言葉を呑み込むのに、一体どれ程の時間を要しただろう。頭は空っぽになり、涙が出るわけでもなく、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

雪のように美しい純白に身を包む私を通りすがりの人々は好奇の目で見つめて、見つめて、視界のギリギリまで見つめて、去って行く。今の自分の状況が物珍しいことくらい、私が一番よく分かってる。

だけど今はとにかく頭を冷やす時間が欲しくて、私はとぼとぼ、と弱い足取りで人気のない方へと歩き出した。

これが何時間か前の出来事。そして私はどこかも分からない場所をウロウロと彷徨っていた。こんな惨めな私を誰にも見られたくなくて、人の少ない方を選んで前進し続けて、気付けば辺りは真っ暗。ぽつんとしか経っていない街灯を目印にして、行く宛てもなくふらふら。

いつからかは分からないけど、土砂降りの雨が私の体を濡らしていた。私の体は随分と冷えていて、鳥肌や震えが止まらなかった。自分の置かれた状況を冷静に俯瞰した時、ふと足が止まった。

こんな私の人生に希望なんてなかった。今日が一番幸せな日になると信じて疑わなかったのに、私の心も頭も絶望で埋め尽くされてしまった。

生きる意味を失ってしまった私は、迫り来る光に気付かなかった。

キキーッ！！！！と大きな音が聞こえて、ふと横を見れば一台の車があった。いや、今止まったんだ。私という存在を認識して。

「ねえ何やってんの！？危ないでしょ！？しにたいの？！」

車の運転手はドアを開け、傘を開きながら下車した。男性だ。こんな惨めな私を見られて恥ずかしいはずなのに、もう何の感情も浮かばなくなってしまっていた。彼の持つ傘に当たる雨音の大きさで、どれ程強い雨が降っているのかをやっと理解する。

しにたいの。そう聞かれて、何も言えない。でもどちらかと言えば。

「……しにたい、です」

私は、何もかも失ってしまったんだから。

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