純愛夢想倶楽部 (ページ40)

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あれ、なんだろう

謎の既視感に襲われる

『侑李ーほらこっちおいで！！海が綺麗だよー！！』

父さんの明るい声ととてとてと父さんの方へ走って行く幼い頃の俺。

だけど肝心の海は身長が足りないせいで木製の柵の合間からしか見えなくて。

エメラルドグリーンに輝く海は合間から見ただけでも十分綺麗だったけれど、

『侑李抱っこしてあげる！』

『ほら、綺麗でしょう？』

父さんの腕の中で見た海はそれよりもっと綺麗だった。

父さんはその後確か。

『ここに泊まっていいよって言ってくれた父さんの友達にありがとうって言わなきゃなー！』

って言ってたような。

・

ばちっと稲妻が走ったように過去の出来事を思い出し、思わず身震いする。

「大貴さん、俺ここに前来たことありますよね？」

大貴さんは一瞬目を見開いた後、侑李くんは記憶力がいいんだねと笑った。

「確かに、空き家同然だったこの家を慧に14年前ぐらい？に3日だけ貸したよ」

通りで初めて来た気がしなかったんだ。

有岡さんが肘をかけている木製の柵に俺も手を置く

、、、あのころと違って開(ひら)けている俺の視界に感慨を覚えながら。

大貴さんにあの時の話をしようと思った。

感謝とともに。

「今テラスに来たときに急に思い出したんです。父さんの」

声と言葉とぬくもりと共に

って言うつもりだったのに

ふと気づく。

あれ、父さんの声が思い出せない。

さっきは確かに聞こえたのに。

父さんの『侑李』って呼ぶ声

なんで思い出せないんだろう

あのすらっとした指が綺麗な手の、

大きさはどれくらいだっけ。

あれ、

あれ、

あれ。