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慧を起こさないように必死に嗚咽を堪える。
机にどんどん水溜まりが出来ていく。
せっかく上手く書けたと思ったのに、紙も濡れちゃったじゃん。
あーあ、もうこんなによれちゃったよ。
もう一回書き直そうと思って椅子から立ち上がったけれど、全身に鋭い痛みが走り、がくっと崩れ落ちてしまう。
時計を見れば0:00まで5分前。
、、、仕方ない。
動きづらくなっていく手で紙を四つ折りにする
これがほんとに最期なんだから真っ白な汚れてない紙に書いて格好つけたかったのに。
何とか折り終わって、足を引きずりながらも何とか慧の傍に戻る
痛みに耐えながら慧のことを見つめていると
その真っ白な肌に、吸い寄せられるように手を伸ばしてしまいそうになる。
だけどもう少しで触れるということではっと思い直す
駄目だ。
俺がどれだけ認められなくても、慧はもう俺の恋人じゃないんだから。
この際だから全部正直に言うけれど、今日ずっと本当は君に触れたかったし、キスだって、ハグだってしたかった。
だからね慧が自分からハグしてくれた時は嬉しくてたまらなかったよ。
たまらなかったけれど、やっぱり雄也への罪悪感が勝っちゃってね。
ふんわりとしか手を置けなかった
本当はきつくきつく抱き締めてずっとそのままでいたかったけれど。
、、、、、、、、だけどごめん雄也
やっぱり最期だけ慧に触れさせて。
心の中で雄也に謝りながら
俺は慧のすべやかな頬に手を伸ばしていた
痛みでほぼ感覚は無いけれど
君の温もりだけは確かに感じられる
俺が触れた瞬間、慧が微笑んでくれた気がした。
幸せな夢、見てるといいな
この温もりを忘れたくなくて優しく何度も何度も頬を撫でる
来世でも君を絶対見つけるから、
その時はまた俺と恋してくれる?
だから、だからね今世では俺じゃない人と
絶対
『幸せになれよ』
Fin.
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作者名:ちゃん | 作成日時:2024年1月28日 9時