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そして2人に向けられていた眼差しが数秒揺れたあと、俺を捉えた。
大貴と。
目が合う。
大貴はそのままゆっくりとした瞬きを数回挟みながら何か言葉を探しているようにぼーっと俺の目を見つめた。
俺も大貴のお腹を優しく撫でながら見つめ返す。
幼い頃から変わらない焦げ茶色でくりくりとした大好きな弟の瞳。
このまま、ずっと弟と見つめあっていたい。
そう強く思いながら唇を噛む。
、、、、そうしないと涙がこぼれそうだったから。
「兄さん。」
ほんのりと酸素マスクが曇る。
「なぁに。大貴。」
わざと感の悪い振りをして弟の名前を呼ぶ。
「2人のこと、よろしくお願いします。」
その目は意思が強くて。
やっぱり俺の大好きな大貴の瞳だった。
「任せとけ。」
そう俺が言うと安心したように微笑み、再び二人を少し名残惜しそうに見てから目を閉じた大貴。
それから5分後、弟は大好きな息子たちと手を繋いだまま息を引き取った。
25歳だった。
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作者名:ちゃん | 作成日時:2023年12月21日 18時