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「覚めないで」ページ40

「お兄ちゃん、これあげる！！！！」

太陽に向かって伸びる向日葵のように暖かい笑顔で笑った──。

その手には眩しいくらいの黄色に色づいているたんぽぽが握られていた。

「ありがとう──！！大切にするね！」

俺がそう言えば──は嬉しそうに頷いた。

その笑顔が愛おしくて、ぎゅっと抱き締める。

すると、くふふと焦れったそうなくぐもった笑い声が胸のすぐそばで聞こえる。

今、己の腕の中でその笑い声が聞こえることが嬉しかった。

この体を離したくないと思ってさらに強く抱き締める。

そんな俺に応えるように──は小さい腕を俺の首に巻き付けてくれた。

・

抱きしめていたと思った──はいつの間にか俺の腕をすり抜けて今度は自らの目元をぐりぐりと何度も何度も擦っていた。

その姿は先程より背が伸びていて、いつの間にか中学生になったのだとぼんやり思う。

「母さん、父さん、」

父と母のことを繰り返し呼ぶ──の頬を透明な涙が滴っていく。

小さい頃から変わらない泣き虫さんな──の涙が俺はあまり得意では無いから、その涙を止めるために自然と口が動く。

「兄さんがついてるから、なんにも心配しなくて大丈夫だよ。」

何の根拠もない「大丈夫」だけど、──の傷ついた心を埋めれるならなんだってよかった。

──はまだ涙を流していたけれど確かに頷いた。

その涙を拭いながら、──を守るために俺がしっかりしなきゃいけない。

改めてそう思った。