≠0 (ページ37)

今日:55 hit、昨日:56 hit、合計:18,438 hit

おかえしページ37

あれは高校生の時だったか。

授業の合間の休み時間でトイレに行こうと教室を出た時。

軽やかな足音が聞こえてきて思わず横をむくと、弾けるような笑顔をした大ちゃんが手を大きく振りながら走ってきていた。

「薮くん！！！」

「あ、大ちゃん。どうした？」

少し息を切らしている彼に声をかける

「兄さんのこと呼んで欲しいの！」

「あ、伊野尾？いいけど、どうしたの」

ほのかに頬を上気させている彼に尋ねる。

教室の中にいる伊野尾をちらりと見ると机に突っ伏して寝ていた。

「体育着忘れちゃった」

てへっと効果音でもつきそうな笑顔(舌までしっかり出している)で大ちゃんはそう言った

相変わらず可愛い。

「あの子誰かな。まじ子犬って感じで可愛いんだけど」

「薮くんの後輩？確かにイケメンじゃん」

そんな女子たちの声も聞こえてくる

相変わらずモテモテなことだ。

「あいつ寝てるし、俺の貸すよ」

そう言いながら廊下にかけてある体育着を取り手渡す

「いいの！？ありがとう！！」

大ちゃんは大事そうにそれを両手で抱え、太陽みたいな笑顔で笑った。

あいつとは本当に反対だよな。

正反対、とまではいかないかもしれないけど少なくとも伊野尾はこんな風に暖かい笑顔では笑わない。

冷たいって訳じゃなくて、伊野尾の場合はうーんなんて言うんだろう。

難しいな。ダイレクトな大ちゃんとは違って控えめとでも言っておこうか。

「明日返すね！！！」

そう言って大ちゃんは嵐のように去っていってしまった。

ほんと騒がしいやつ、笑

思わず苦笑してしまう。

次の日、大ちゃんが綺麗に畳まれた体育着を返してくれたんだけど、その時伊野尾がねちねちと俺の耳元で「俺が貸したかったんだけど。」って言っていたのはまた別の話かな。笑

ブラコンを怒らせると本当に怖いぞ。