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それから少しして口を開いたのは、ゆーりくんだった。

「慧にいに１回聞いたことあるの。パパのお話。慧にいはね、初めは笑顔で沢山教えてくれたんだけど、段々悲しそうで苦しそうな笑顔になっちゃったの。涼介も僕も慧にいのその顔好きじゃないし、あんまり見たくない。だから、慧にいの前でパパのビデオは誕生日の時しか見ないし、お話は聞かないようにしてるの。」

ゆーりくんはゆっくりと少し目を伏せながらそう言った。

その話を聞いた時。

伊野尾はこんな小さい子たちになんで気を使わせてるんだよ。って少しの憤りを正直感じた。

だけど、同じくらい痛いほどわかってしまった。

伊野尾がまだ。

大ちゃんのことを心から愛していて、今も逢いたくて逢いたくて仕方なくて、忘れられないこと。

あんなにブラコンだったやつだ。

そりゃあそうだよな。

きっとこれからもそうなんだろう。

その気持ちを押し殺せなんて伊野尾に所詮部外者の俺が言える訳ない。

「そっか。2人は慧にいのことも考えてて偉いね。大ちゃんのことは俺がいっぱい話してあげるからね。」

俺は、代わりに大ちゃんの思い出を2人に伝えることしか出来ないから。