≠0 (ページ32)

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おもいでページ32

ybside

現在時刻は定時の18:30

ホワイト中のホワイトである我が社はみんな続々と帰っていく。

俺も帰ろうとコートに手をかけるが、隣から止みそうにないパソコンを叩く音が聞こえ、声をかけることにする。

「伊野尾帰んないの？」

昨日と一昨日は定時で帰ったみたいだけど、残業記録を見る限り、家で残業してたっぽいし。

何より目の下の隈が濃い。

寝不足なんじゃないかな。

そろそろちゃんと休んだ方がいいと思うんだけど。

俺のそんな願いが届く訳もなく、伊野尾はパソコンと図面と交互ににらめっこをしながら俺の方を見ることもせず、答える

「帰らない。区切りいいところまでやる。」

区切りいいところねえ。

完璧主義のお前ならまだまだ時間はかかりそうだ。

「なんか、手伝うことある？」

「ありがと。だけど仕事に関しては無い。」

即答ですね。

相変わらず人に頼ることを知らないな。

お前は。

だけど''は''ってことは、、、

なんとなく次の言葉が予想できる

「薮がいいんだったら、りょうとゆーりのこと頼むわ」

伊野尾はそう、机に飾ってある大ちゃんと2人の赤ちゃんの写真と先日あったらしい運動会での2人の写真をちらりと見て言った。

はあ。

そう言うと思ったよ。

家族思いなのか仕事人間なのか分からないな。

まあ昨日や一昨日はきっと2人のために定時で帰ってるところをみると前者なんだろうけれど。

ため息とかついちゃったけど、俺もあの2人が可愛くて仕方ないし、どうせ一人暮らしの家に帰っても寂しいだけだから断る理由はないしな。

「へいへい。任せとけ」

俺がそう言えば伊野尾はやっと俺の方に向き直り、真っ直ぐ目を見て言った。

「いつもありがとう。薮」

「どういたしまして。あんま無理するなよ。」

無理するな。と一応言うけれど、こいつはきっと聞いてくれない。

だけど俺はさ、頑固だけどお礼はきちんと目を見て言う誠実なお前のこと、やっぱり好きだよ。