先生とぼく (ページ11)

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「先生さようならー！」

「おー、気をつけて帰れよー！」

学校にもだいぶ慣れてきた5月中旬。
クラスの皆も素直で良い子が多くて安心。
でもひとつだけ…

薮が学校に来ない。

仕事が忙しいんだろうけど
始業式以来1日も来ていないし、
流石に出席日数が心配。
2年の時もギリギリ進級できたレベルだったらしいし…。

デスクでもうすぐ始まる中間試験のテストを作成していると、職員室の角にあるテレビに薮が映っていた。

「あー、薮だ。」

「毎日のように観るよなー。」

「でもあんまり学校来ないですよね？」

「学校来ても人と関わろうとしないし、
テレビとは全然違いますよね～。」

先生達がテレビを眺めながらそう話している。
人と関わろうとしない…か。
確かに始業式の日もずっと俯いてたしマスクしていたし、女の子の誘いも断っていたっけ。

俺の芸能人のイメージはプライベートも派手で、女の子と沢山遊んだり金遣いも荒かったり…

でも薮は真逆だなあ。

それほどファンを大切に思っていて、
真面目に活動しているってことか。

「…ば…い…、相葉先生、相葉先生！」

「はっ、はい！？」

「ったく…、会議始まりますよ。」

呆れ顔でこちらを見てくるのは二宮先生。
大学も一緒だった同期の仲間。

「あ…、あの、ニノ…みや、先生」

「なんですか。気持ち悪いな」

会議に向かおうとする二宮先生を引き止めると、くるりと振り返って笑った。
ニノなら…二宮先生なら、薮とどう向き合うんだろう。
俺なんかよりも頭が良くて賢い二宮先生なら。

「今日…飲みに行きませんか？」

「…はあ？仕事中にそんな話やめなさいよ。
…ま、いいですけど。」

ありがとうと小さな声でお礼を言うと、
二宮先生はふっと笑って、もう先に行きますよ。と会議室に向かってしまった。