ヒモの彼氏とヒモノの私と、 (ページ9)

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このままじゃどうにもならない、
そう思ってリビングを出た。

スマホだけスウェットのポケットに突っ込んで、
外は寒いだろうから適当にコートを羽織る。
…財布すら持ってないけど、もういい。

言い負かされて出て行くなんて子どものやることだ。
やっぱり北斗の言う通り、私ってガキなんだろう。

だから言っただろ？って北斗の声が聞こえるような気がして、
心の中でぶんぶんと首を振りながら早足で玄関に向かう。

「っ、待って」

突然掴まれた手首。
振り向けば、エプロンも外してない北斗が不安そうな顔で立っていた。

「…なに、離してよ」

「…」

「ちょっと外出て頭冷やすだけだから、どうせ子どもなんだから、」

「出てくのはさ、無しにしようって…決めたじゃん」

不貞腐れた私の言葉を遮る北斗の声は弱々しくて、語尾なんかほとんど消えてしまいそう。

それに反して私の手首を掴む力はきゅっと強くなる。

北斗が戻ってきてから、私たちの間にはいくつか約束ができた。

"朝のゴミ出しは私がする"とか
"片方が眠くなったらできるだけそれに合わせて寝る"とか

その中の一つが"喧嘩しても家を出ない"。

「ん…ごめん」

北斗が出ていったあと寂しかったんだよ、って
この約束を取り付けたのは他でもなく私だったのに。

「俺もごめん、なんか…ムキになってた」

「うん…私も」

さっきまでの刺々しい言葉はどこへ行ったのか
2人ともしゅんとして静まる廊下。

なんだか可笑しく思えて吹き出すと、
北斗も困ったように笑い出した。

「今、笑うとこあったか？」

「ないけど、ふふっ、なんかおかしくて」

「ふは、変なやつ」

仲直りのきっかけなんて
わざわざ外に出て探すまでもないのかも。