ヒモの彼氏とヒモノの私と、 (ページ38)

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『A！？』

「美穂さんがね、駅にいて、河川敷まで来たんだけど、逃げてて、追われてて…」

地面に蹲ったまま、なんとか言葉を繋ぐけど
支離滅裂になって伝えたいことが全然出てこない。

『河川敷？駅近くの？』

「そう、美穂さん追っかけてきて、逃げてたんだけど、転んで、っはぁ…」

『大丈夫？俺も今近くにいるから、すぐそっち行くからな』

「どうしよう、逃げなきゃ、どうしよう」

『A落ち着いて、大丈夫だか、』

北斗の言葉を遮るようにスマホが取り上げられる。
通話終了をタップしたのは、当然私を追いかけてきたその人。

「…あなたのこと、調べさせてもらったんです。探偵使って」

美穂さんは口元にだけ薄く笑みを浮かべた。

「毎日仕事ばっかで大変そうじゃないですか。今日だってこんな時間まで帰れないなんて」

「だから何、」

「大丈夫、ちょっと寝てる間に全部気にしなくてよくなりますから。もう会社に行かなくていいし、嫌いな上司相手にへらへらする必要もない」

美穂さんの手元がまたバチッと鳴る。

「そうやって大人しくしててくれたらいいんですよ」

「…やめて、来ないで…っ」

さっき転んだ拍子に足を捻ったらしく、うまく体が動かない。
美穂さんが腕を振り上げるシルエットが見えて、ぎゅっと強く目を瞑った…