ヒモの彼氏とヒモノの私と、 (ページ35)

今日:5 hit、昨日:18 hit、合計:180,095 hit

・Hokuto ページ35

「…高校の頃付き合ってた」

樹の表情は変わらない。

「事件起こす前に告白されて付き合って、
けど俺が忙しくなったのを見てから遊び始めて…
…そのまま捨てられた」

「で？そんな女が何で今更出しゃばってくんだよ」

「俺もわかんねえよ…」

眉を顰めながら一瞥されると
つい怯んで目をそらしてしまう。

「ただ…Aと一緒にいるとこを見られてから、誰かに尾行されてる感じがした」

「…」

「昨日も…コンビニ行った帰り、急に話しかけられた」

「今までもあったのか？そういうこと」

「いや…」

少年院を出て以来、
同級生に会うなんて一度もなかった。

「その女…美穂？は今、婚約してるらしい」

「は…？」

「相手は大企業の御曹司で、契約結婚みたいな側面もあるってさ。どうせこの女の実家も地主とかそういうのだろ？」

「待てよ、何でお前がそんなこと」

「俺を誰だと思ってんだ」

着ていたジャケットから取り出された何枚かの写真は
駅だかどこかで男と並んで歩く美穂の姿。

「探偵業なんて朝飯前だよ、無給なんか出所したて以来だけどな」

「…」

「いい気はしねえと思うけど、今はそれどころじゃない。Aさんと連絡とれるか？」

「え？ああ…」

混乱したままスマホを取り出すと
昨日から何度もかけた番号をまたタップする。
あんなに音沙汰なかったのが嘘のように、すぐコール音が途切れた。

「…もしもし、A？今どこ…」

『北斗っ、助けて…！』