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よく考えたら、
昨日はもう暗かったし
北斗と話していた人が本当に"美穂さん"だったかと言われると
正直あまり自信はない。
もしかしたら
たまたま道を聞かれただけかもしれない。
お隣さんと偶然同じタイミングで家に入ろうとしただけかもしれない。
そもそも女の人だったかどうかも分かんないし、
…いや確かに髪が長くてスカート履いてた気はするけど
それだけじゃ男性か女性かなんて区別できない時代だし。
あれこれと考えても
胸の奥にはどうしてもモヤモヤがこびりついたまま。
極めつけは、北斗からの連絡。
会社を出てスマホの電源を入れて、
電車を乗り継いで家の最寄り駅まで一時間弱のあいだ
北斗から、新しい着信もメッセージもなかった。
改めてよく見れば、
最後のメッセージは昨日の深夜2時頃を最後に止まっている。
いやいや、さすがに寝たんでしょ。
北斗だって仕事だし。
じゃあ今日は？
起きてから何の心配も無し？
「はぁ…」
…また葛藤が始まる。
心配されたいわけじゃない、
むしろ心配させてごめんねって謝りたい。
でも嫌な想像は止まらないから
素直にごめんねって言える自信もなくて
未だに既読はつけられずにいる。
「家、帰らないとな…」
タイミングを見計らったかのように降り出した雨は
家路をためらう都合いい言い訳だった。
折りたたみ傘ならあるけど
もう少し待ったら止むかもしれないし
カフェにでも入ろうかな。
「…あの」
「藤原Aさん、ですか…？」
後ろから名前を呼ばれて我に返る。
人通りの多いところで立ち止まって、迷惑だったかな。
いや、そうじゃない。
「えっと…どちら様ですか？」
ロングの黒髪に、白いスカート。
透き通るような肌に大きな瞳。
どちら様、なんて我ながら白々しい。
答えなんてもらいたくない。
「松本美穂といいます。
北斗の…同級生です」
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作者名：はぴ | 作成日時：2020年2月29日 23時
