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作業を始めて小一時間。
やっぱり慣れないことすると疲れるな、と思ってぐっと背伸びをする。
火にかけたフライパンの中ではざく切りにした野菜たちがちょっとずつ柔らかくなっていって、パチパチと油がはじける音がしていた。
あ、調味料どこにあるんだろ。
長らく使っていなかったキッチンはすっかり北斗用にカスタマイズされて、
いちいち探さないとなにも見つからない。
それぐらいにキッチンから遠のいていたせいで、
距離感や狭さの感覚もなくなっていたのかもしれない。
「っ、熱っ！？」
戸棚を振り向きながら背伸びの腕をおろしたせいで
指先が火にかけられたフライパンの縁を掠める。
思わず声が出て手を引っこめた。
「A、？」
少し赤くなった指先を見つめていると
リビングからバタバタと足音がして北斗が駆け寄ってきた。
「あ、起こしちゃった？ごめんうるさくして」
「いや、てか何？どうしたの？」
「北斗寝てたから、たまには私が晩ごはん作ろうかなって」
「そうじゃなくてさ、今あつって…」
そこまで言ってから私が指先を見つめているのに気づき、
心配そうに眉を下げて私の手をとった。
「赤くなってんじゃん…冷やさないと」
「たいしたことないって、そんな大袈裟な」
私の言葉なんか聞こえてないのか、
蛇口を捻って勢いよく流れる水で冷やされて指がジンジンする。
「起きたらさ、料理してる音して、Aも料理するんだなって半分寝ながら思ってたら急に声するからびっくりした…」
「心配しすぎだよ」
「うるせえよ、心配ぐらいさせろ」
急に強くなる口調も照れ隠しのひとつ。
それはわかってるけど、いくらなんでも過保護すぎない？と苦笑してしまう。
「…何笑ってんだよ」
「なんでも？今日は私作るから北斗は待ってて」
「心配だからここにいる」
「えっなんかプレッシャーすごいんだけど」
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作者名：はぴ | 作成日時：2020年2月29日 23時
