鉄のハンスの呪いをとけば【Ym*In】 (ページ39)

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ハッピーライフページ39

だいたい、飼い主が社会的に死んだからって、何も俺まで警察の庇護下から追い出すことないじゃん。おかげで路頭に彷徨うことになっちゃったし。

ホテルから出たところで電話がかかってきて、それに出る。

「もしもし～？」

『あ、いのちゃん？』

「うん、そうだよ～。ゆうり？」

『うん。あのねいのちゃん、ちょっと相談があるんだけど』

保護したては、毛を逆立てた子猫だったのに、今や立派な大人になったゆうりとゆうと。
ゆうりはなんと、大ちゃんとカレカノになっちゃって。
ゆうとは、ちゃんと勉強して、大学まで行って、今は職につきながら、大学でできた彼女を大切にしている。

俺が涼介を誘き出すためにマーケットの名前に使ってしまった薮や、飼い主に勝手に仕立て上げてしまったけーとは、追い出された俺をいまだに気にかけて、戻ってこい、って言ってくれてるけど、戻る気はない。

それに、持っていくものも、マスコミの映像まで、捨てちゃったしね。
今頃涼介やそのお友達は、復讐を終えて、ハッピーライフを送っているだろう。

うんうん、我ながらいいことしたね。

『ねえ、聞いてる？』

「聞いてる聞いてる～大ちゃんをどう誘うかって話でしょ？」

『もう、ちがう！……まあ、もういいけど。ごめんね時間とっちゃって。また僕たちの家にも遊びに来てね』

「はいは～い」

大ちゃんには、ゆうりとゆうとを連れて涼介のところにいって、真実を教えてやって、と頼んだ。
その時に、俺の居場所は言わないで、とも。

だって好きなんだもん。どうしようもなく、好きになっちゃったんだもん。
飼い猫になるしか能のなかった俺が、まともな社会人をしている涼介に恋してたって、ねぇ。
きっと涼介も俺のことは好きだったけど、ここまで追いかけてきてもらうのも申し訳ないし。

いいのいいの、俺はこうやって生きてく方が性に合ってんだから。

そうやって、寂しさに、目を瞑って。