鉄のハンスの呪いをとけば【Ym*In】 (ページ28)

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逃げ込んだ家ページ28

それぞれ飼い主が決まった俺たちは、別々の部屋に運ばれて。そこで俺は、腹の出た、汚いジジイに抱かれた。
抱かれた、なんて生易しいものじゃなかったな。体と一緒に、精神まで引き裂かれるような、そんな感じだった。

それから俺は、そのジジイの飼い猫になって、贅沢な食事と、十分な時間と、寝床と、服を与えられた。
そこで勉強して、知識をつけて。

今度は、そのジジイに、買い手側として、マーケットに連れていかれた。
そこには、ゆうととゆうりを買ったジジイどもがいて。

「……ゆうととゆうりは、って聞いたら、笑顔で捨てたって言いやがったんだ。怖くなったね、買ったものとはいえ、簡単に人の命を捨てられるんだから。
……俺、ジジイの寝る前の酒持っていく役もあったんだ。そこに、睡眠薬盛って、逃げた。
逃げ込んだ家で、今日一緒に来た友達2人と出会った」

俺に金掴ませて手酷くだきやがる親から逃げてきた、って言えば、2人の家族はあたたかく俺を迎えてくれた。

「それが9月。中3。独学だったから心配だったけど、高校受験して、2人と同じ高校に入って、一人暮らしはじめたの、」

2人は兄弟なわけじゃなく、お隣さんで、普段から家族ぐるみで仲が良かった。
俺は、八乙女の両親と雄也の両親に、警察にも、児童相談所にも言わないでって言った。
そこから足がつけば、またあの家に引き戻される。金持ちの家だから、そのくらいすぐできる。それを俺は知ってる。

歓迎してくれてはいたけど、他人の子ども。
俺を持て余していた2人の両親たち。
何かを言われる前に出て行こうと、一人暮らしをはじめて、
その家で、2人に、俺の過去を打ち明けた。

「それから、まぁ、ね。腐れ縁っていうか。マーケットにきたのは、俺がいた頃とはどう違ってるんだろうって気になったから」