鉄のハンスの呪いをとけば【Ym*In】 (ページ3)

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ボロボロのソファページ3

「……初日から残業なんてしなくていいんですよ？」

「ほぇ……だって、山田さんが、してるので……」

少し前に休みをいただいていたから、その分を取り戻すために、残業していると、同じようにずっと残っている伊野尾さん。
声をかけると、少しだけ顔が上がって、目が見えた。

「……そういや、伊野尾さん、前髪邪魔じゃないんですか？」

「ああ……切るの、忘れてて。それに、俺の顔なんて、見ても別に気持ちのいいものではないですし……」

「もったいない！綺麗な目、してますよ？」

用紙を褒めれば、男でも女でも、心を開くようになる。そう思って、言ったのに、コイツはぜんぜんなびかなかった。

「それより山田さん、はやく仕事終わらせないと」

「っあ、ああ、忘れてた……ありがとうこざいます」

笑顔を浮かべるけど、内心はイライラ。
なんだコイツ、扱いにくい。今まで俺にコロコロおちてきた人種と、全く違う。

仕事を終えて、家に帰ってから、また家を出る。
住んでいるアパートの下の階、『八乙女』と表札がかかっている部屋に、インターホンを押さずに入って、誰もいないその部屋の押入れを開けた。

するとそこには、布団も何も入っておらず、地下へ続く階段がある。

「……なに、今日ちょっと不機嫌じゃん」

「黙っとけ、お前みたいなホストとわけが違うんだよ」

ネクタイを解いて、ボロボロのソファに雑に腰掛ける。ムカつく笑みを浮かべた雄也は、音もさせずに隣に座った。

「社会人は大変だね、寝る時間もないんじゃない？」

「本業休んでまでこっちにきてるお前になんか言われたくないね、ストレス溜まってんだよどっか行け」