鉄のハンスの呪いをとけば【Ym*In】 (ページ16)

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汚い欲ページ16

「っサツくるって、出ないと、」

「……おれ、しらない……けーとに、誰か来たらおせって、けいさつくるからって、いわれただけだもん……」

「は、しおらしいな、本当のお前はこんなんじゃないくせに。自分の男に黙って、こんなとこで立派に飼い猫してさ」

「っ涼介！」

雄也に背中を叩かれて、ハッとする。自分が自分じゃなくなったみたいだった。
頭がカッと熱くなって、口からいろいろな言葉が出て。それが、刃に、なった。

「ックソ！」

伊野尾さんの首につけられているブルーダイヤモンド。お前のものにはならないぞ、っていう意思表示みたいに見えて、イライラした。

「ああもう！恋するのは勝手だけどさあ！俺らのことも考えろって！ブレーンだろお前！」

「ああ！？なにが恋だふざけんな！ていうか失敗した時用の抜け道用意してるに決まってっだろ！」

雄也が叫んだのに言い返す。そうだよ、なにが恋だ。そんな生易しいものじゃない。もっと本能的な衝動。
手に入れたい、俺のものにしたい、っていう、凶暴な。
それこそ、俺たちが嫌っているヤツらと同じような、欲。

盗みをはじめてから、初の失敗。笑えない、それに関わった人が、俺が汚い欲を抱いてしまった相手だなんて。

「はぁっ……はぁ、はっ……ここまでくれば大丈夫だろ……」

「さすがはブルーダイヤモンド」

「や……きっとブルーダイヤモンドじゃなくて、伊野尾さんへの執着だよ」

「え？」

「首輪だけじゃなく、足枷までついてた。どこの時代の奴隷だよ……」

伊野尾さんは、『やぶ』のもので、『岡本圭人』の猫。ああいったい、どんな人生を送ってれば、そんな奇っ怪な関係性が築けるんだよ、ホントに。