こんな結婚望んでません！2

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佐久間さんは私の手を引いて寝室へ向かった。
手を握られるだけで、体温がグンと上がる。
ドキドキしてしまって、恥ずかしくなって俯いたままついてゆく。



寝室のベッドに二人でもぐりこんだ。
ここで寝るのは私が熱を出した日以来だ。

あの日と変わらない金木犀の香りに包まれる。
優しくしてもらえた日々を思い出して。
でも、もう今日で最後とも実感して。
暖かい気持ちと悲しい気持ちがごちゃ混ぜになって泣きそうになる。



佐久間さんがお布団の中でも手を繋いできた。
ビックリしてそちらを見ると、目が合う。
スルリと指を撫でられた。




「Aちゃん、さ・・・男をベッドに誘ったんだよ。」

『へ・・・？』

「分かってるよね？」



ゆっくりと佐久間さんが起き上がり、私へ覆いかぶさった。
下から見る佐久間さんは嫌に妖艶で、私は動けない。

一晩の慰みでも、最後に貰えるのも良いかもしれない。
気持ちは通じ合っていなくとも。
ぎゅっと目を瞑った私の上で佐久間さんがクスリと笑った。




「そんなに固くなっちゃう子、無理やり抱いたりしないよ。」



俺だってそこまで鬼じゃない、と自嘲気味に笑う佐久間さん。
固く瞑った目をソッと開こうとすると、唇に柔らかい感触。
チュッ



「でも、これだけは貰うね。」




ごめんね。
そういって、反対を向いて寝てしまった佐久間さん。



そっと唇の淵を撫でる。
酷く熱い。




キスする瞬間、薄っすらと見えた佐久間さんの顔は泣きそうで。




どうして、そんな顔してキスしたの・・・？



どうして謝るの？




何もわからないけど、私のファーストキスは明日お別れする好きな人に捧げた、それだけは事実だ。

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