・ ページ43
・
第三隊舎にある訓練所。王国軍の全分隊がそこを中心に円を作った。俺の隣でナイフを持つぶるっくの顔色はみるみる内に白くなっていった。
「考えなきゃ...最善の策を」
彼の透き通っていたはずの青い瞳は、少しだけ濁っているように見えた。ぶるっくのこの様子を見る限り、先ほどの会話のことは全て本当なのだろう。きんときが俺らに無断でシャークんを助けにいった。
正直、成功するとは微塵も思えないが。
「私からも質問いいですか、スマイルさん」
俺の左隣で背筋を伸ばしてたっている彼女は、訓練所を見つめたまま、俺の名を呼んだ。
「あぁ。何だ?」
「皆さんは何を企んでいるの」
彼女はぎゅっと右手を握りしめた。
「反逆を起こそうと考えているのならば、すぐに止めるべきだ。
無論、私には貴方たちが何をしようが、関係はない。
ただ、私の邪魔をしないで欲しい」
「お前の邪魔?」
「えぇ。私は、
_________総統様に復讐へ来たのだから」
彼女の声色はとても冷たかった。過去に何があったのか、そんなこと俺たちには知るよしもない。ただ一つ、知っていることと言えば。
彼女の故郷であるアルファ国が、我々国の戦争に破れたことをきっかけに滅びた、という事実だけだ。
「一つ、提案があります。
それは、私にも貴方たちにも得がある素晴らしいモノです」
彼女を利用すれば、あいつらを助けられるかもしれない。
俺らを利用すれば、彼女は総統様を殺せるかもしれない。
俺は彼女が何を言い出すのか、解った気がした。
「私が貴方たちのお仲間を救うお手伝いをしましょう。
その代わり、貴方たちはこの軍に関して知っていることを全て吐きなさい。
私が総統を殺すまでの算段を考えるのを、手伝ってください」
「それは、ど_________」
「その提案、乗った」
答えたのは俺ではない。少しけだる気で眠そうな声が、俺の声を遮って彼女に了承の意を示した。ぶるーくは俺の隣に立ち、大きな右手を彼女の前に差し出す。
「...お互い、がんばろーね。自分が選んだ道のために」
テラさんの小さな手のひらが、同じように差し出される。彼女の瞳はいつもの冷たいモノではなく、奥底に温もりを帯びた優しい瞳をしていた。
「第六分隊、分隊長なかむ」
突然、聞き覚えのある声が俺たちの前に佇む。すぐに手を引っ込めた二人は、危なかった、と冷や汗をかいていた。
「グルッペン直々のお呼びだしや」
「...了解しました」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葡萄。 - りゅうかさん» ありがとうございます!更新頑張ります!! (2020年10月1日 12時) (
レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
りゅうか - これ、すごく面白いです!更新頑張って下さい!応援してます! (2020年9月30日 18時) (レス) id: bcaef78a16 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄。 - 夜さん» お好みにあっていた様で良かったです!!私は髪、私は髪...(動揺) (2020年8月17日 12時) (レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - 神ですか？？？？好きです… (2020年8月17日 10時) (レス) id: 0de64ad68c (このIDを非表示/違反報告)
葡萄。 - るーさん» 何時もありがとうございます!!めっちゃ更新頑張ります! (2020年7月15日 16時) (レス) id: 0d09c9d04a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葡萄。 | 作成日時：2020年7月12日 14時
