僕と君と僕らの物語【短編集】 (ページ27)

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玄関のドアを開けると外出する時にはなかった靴。あ、来てるんだ、と思うと同時に廊下の先の扉がガチャリと音を立てて開いた。

蓮｢おかえり｣

｢ただいま｣

蓮｢お母さん元気だった？｣

｢うん、相変わらず｣

用事があるから実家に帰るということは伝えていた。彼は朝から仕事だというので一緒には行けなかったけれど、高校の時から付き合っているからうちの家族とは結構仲が良い。

｢あ、そうだ｣

実家で母に渡された数枚の写真。不思議そうに受け取った彼はそれをじっくりみるとふっと笑みをこぼした。

蓮｢うわ懐かし、｣

｢ね。写真整理してたら見つけたんだって｣

蓮｢これ文化祭？｣

楽器を抱えた私と私の肩に腕をまわして反対の手でピースしている彼の写真。文化祭での演奏を観に来てくれたときだ。

蓮｢体育祭のもあんじゃん｣

学校のジャージに身を包んだ二人。ハチマキの色は違うけど、合間に校舎とグラウンドの間の段になっているところで座ってしゃべったりした思い出がある。

蓮｢おーここだ、ここ｣

私の卒業式の日、あのベランダで撮った二人の写真。2人で、しかも背の高い蓮と並んで立つには狭くて、すごく密着している。

蓮｢泣いた顔してんね｣

｢だって蓮と毎日会うのが普通だったのに、会えなくなるから、｣

蓮｢珍しく寂しいっつって泣いたよな(笑)｣

懐かしー、と笑う彼。

過去を振り返るのはあんまり好きではないけど、今日は懐かしい思い出に浸りながらのんびり話でもしよう。優しい目で写真をめくっていく彼の隣に沈んだ。

学生時代の思い出に溢れた恋