薬局の君と紫のパンジー * Tatsuya.F ページ16
病院に訪れた。数日前に腕や首に変な発疹が出て、様子を見てたけどあんまり良くならないし、人前に出る仕事をしてるからそのままにしておくのも気が引けたから。
軽い蕁麻疹ですね〜と言われ、塗り薬を処方された。薬局で番号札をとって並べられた椅子で待つ。平日だからかお年寄りばかりだ。思い返してみれば病院自体、来るの久しぶりだった。
｢番号札55番でお待ちの方〜｣
人の多さに反して思っていたよりも早く呼ばれた。結構待つんだろうと覚悟していたもんだから、拍子抜けして立ち上がる。
｢えーっと、深澤辰哉さん。｣
辰｢あ、はい。｣
｢今日は蕁麻疹のお薬ですね、｣
病院とか薬局の人ってみんなめちゃくちゃ優しい話し方だよな、と思いつつ薬剤師さんの顔を見ると、思いの外若くてかわいらしい人だった。
細かく動くまつげを見ていると、その丸い目と視線があってしまった。
辰｢あ、｣
｢先生の方からもお薬の説明あったと思いますけど、朝晩の一日2回、ご使用くださいね〜｣
辰｢あ、はい、わかりました。｣
｢何かわからない点とか、ございますか？｣
辰｢あー、いえ、大丈夫です。｣
｢蕁麻疹よくなられるんですか？｣
辰｢いや、あんまりない、すね、｣
｢そうですか、お薬冷暗所で保管してもらえればまたなった時使って大丈夫ですよ。使用期限だけ、気をつけてくださいね。｣
辰｢わかりました。｣
｢はい。では、お大事に。｣
微笑んだ顔がかわいくて、不覚にもちょっと見とれた。なんとか｢ありがとうございます｣って言って薬局を出たけど、自分の挙動不審加減に自分でもキモいなって思った。薬剤師さんなんて誰にでも優しいだろ。
蕁麻疹はもらった薬でだいぶ良くなった。薬を使うたびにあの薬剤師さんの微笑みを思い出していたけど、蕁麻疹が治ってからはあの薬剤師さんを思い出すこともなくなっていった。
夕方、人で賑わう駅。仕事終わりラーメンを食べて帰ろうと思ったら友達から連絡が入り、一緒にラーメン屋に行くことになった。生垣を背にコンクリートのふちに軽く腰をかけてスマホをいじりながら待っていたその時。
｢あの、すみません、｣
右ななめ上から声が降ってきた。一応ジャニーズだし、たまーに声をかけられることもある。これだけ人がいれば俺のことを知ってくれてる人も1人や2人いるだろう。自然に、でも幾分か明るく答える。
辰｢はい？｣
｢あの、その辺にスマホ落ちてなかったですか…？｣
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エマ(プロフ) - 、さん» すっかり外したつもりでいました！ご指摘ありがとうございます！ (2020年8月9日 16時) (
レス) id: 33d9c37471 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エマ | 作成日時：2020年8月9日 16時
