やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ7)

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昼下がりの哲学 * Ryota.M ページ7

｢しぬのって怖いのかな｣

突然のそんな言葉にぎょっとして彼女を見た。いつも通りソファーに座る彼女の視線の先には、テレビ。情報番組には僕たちもよく知る芸能人の訃報が流れていて、彼女の発言の理由を察した。

｢こうやって芸能人の訃報ってテレビで流れるじゃない？子どもの頃に観るのはまだあんまり知らないような人ばっかだったんだよ。でも大人になるにつれて見たことある人とか、誰もが知ってる有名な人とかが亡くなりましたって流れてさ、｣

確かにそうだ。でも不思議なことじゃない。歳を重ねるっていうことはみんな平等だから。僕たちが子どもの頃からテレビで観てきた人達も、僕たちも歳を重ねていく中で同じように歳をとっていく。

｢別にテレビで観てるだけで知り合いなわけじゃないのに、なんか悲しくなるっていうか、むなしくなるっていうか｣
涼｢Aは感受性豊かだね｣
｢、、そうかな、｣

涼｢テレビで観てるだけといっても、その人の人生の一部分をみてることになるからね。それがたとえ一方的なものでも、その人を知ってることに変わりはない。知ってる存在がなくなってしまったことに感情が動くのは不思議なことじゃないよ。｣

｢、なんかすごい、納得した。｣

大人になると身近な人が亡くなることも珍しくない。その度になんだかむなしくなって、｢死｣を意識するんだ。だから彼女の気持ちはよくわかる。昨日までそこにあった生命が、今はもうないんだと思うと、｢生きるってなんだろう｣｢しぬってなんだろう｣と、永遠に答えの出ない問いが頭の中にぐるぐる回る。これまでの人類の長い歴史の中で、名だたる哲学者たちが嫌になるほど考えたであろうこの問いに答えがないっていうことは、そういうことだ。