やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ35)

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両手に1個ずつ服を持って悩むA。部屋着の緩い袖口から伸びる腕が、一生懸命ハンガーを顎の高さまで上げているのがなんとも言えなくかわいくて、思わずその二の腕をつまんでみた。

｢ちょっと！｣

亮｢ごめん、かわいくてつい(笑)｣

｢かわいくない、二の腕やだから、｣

亮｢なんで？｣

｢ブヨブヨだから｣

亮｢え、そう？｣

｢そうなの｣

ふい、とまた鏡の方を向いてしまった彼女。ちょっと気まずくなってしまったから俺もそこから離れてベッドに腰をかけた。
ブヨブヨとか言うけど全然そんなことはないし、むしろ女の子らしいふわっとした感触で可愛いと思うけどな。

｢こっちにする、｣

ようやく服を決めたらしい彼女に着替えるからと寝室を追い出されて、さっきまで本を読んでいたソファーに座った。彼女は絶対に俺の前で着替えたりしない。そのおかげか、長く付き合ってるけどいい意味で慣れすぎていないし未だに彼女にはドキドキさせられることが多い。

寝室からでてきた彼女はさっき右手に持っていた服に着替えていて、やっぱり可愛くてよく似合っていた。

亮｢うん、可愛い｣

また照れ笑いをして洗面所に向かっていった彼女を追いかける。

亮｢ね、怒ってる？｣

洗面台の前に立ちリップを塗る彼女に後ろからくっついて鏡越しにたずねる。

｢…怒ってないよ｣

亮｢ほんと？｣

｢うん｣

亮｢よかった｣

亮｢いきなり触ったりしたのは悪かったけど、俺からしたらAはずっとなんでも可愛いの。｣

わかった？と言い、また鏡越しに彼女の様子をうかがう。彼女の顔は塗りたてのリップに負けないくらい真っ赤だ。そうやっていつまで経っても慣れないところもまた、どうしようもなく可愛い。

その可愛い頬に小さなキスを