やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ4)

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私は気づいてる。帰ってきてからずっと、亮平のことを考えてる。
最近こればっかりだ。いつからか亮平がいるのが当然になって、いない時に彼の存在を強く感じてしまうようになった。私の目の前にはいないのに、私の頭の中でこれでもかと存在感を放ってくる。『いないこと』が確かにそこに在る。なんて厄介なのか。いないことに変わりはないのに。

出口のない迷路に迷い込んでいくいくような感覚になったから、｢さすがアイドルだな｣っていう感想で結論づけることにした。アイドルだから、こんなにも存在感が強いんだ。そうだ。すごいなアイドルって。

亮｢なーに一人でぶつぶつしゃべってんの？｣

｢え、、｣

気づかなかった。頭の中の亮平に気を取られすぎていた。聞かれてたの？さすがアイドル、とか言ってたの。

亮｢あ、またこんな時間に仕事してるー｣
｢あ、えと、これはちがくて｣
亮｢ちがくないでしょー｣

ちがう。そっちじゃない。喋ってたの聞いてたんじゃないの。ちがう。今日はずっと頭の中の彼と居たものだから、目の前に本物の亮平が現れて、処理しきれてない。

｢なんで、、リハーサル、は？｣
亮｢リハーサル、してきたよ？｣

｢なんで、ここに｣
亮｢だって、合鍵持ってるもん｣
｢、じゃなくて｣
亮｢会いたくなった。だめ？｣

だめなわけない。だめなわけないし、だめだとも思ってないその顔が可愛くて、甘くて、ずるい。

亮｢なんかAのことふと思い出したら会いたくなっちゃってさ。このまま1人の家帰ってもAのことずっと考えちゃうなーって思って、それなら来ちゃえって。｣

へらっと笑って言う彼は確信犯なのか、わからないけど、彼の気持ちが、彼の存在が嬉しくて、どうでもよくなった。

亮｢はい、仕事終わり！寝よ？｣

私の手を引いてベッドに入り、あの日みたいに腕枕をしてくれる彼。細く見えるけどちゃんと男性を感じる腕に、いつもキュンとしてしまう。

｢お風呂は、？｣
亮｢リハ終わりでシャワーしてきたから｣
｢そっか、、｣
亮｢この状態でそれ聞く？笑｣

亮｢ねえA？｣
｢ん？｣
亮｢さっき、｢すごいなアイドルって｣って言ってたの、なに？｣
｢んー、、ひみつ、、｣
亮｢なんだよー笑｣

やっぱり優しくて甘いその手