やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ29)

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｢変わってるね｣って言われて生きてきた私にとって、彼は私を真っ正面から肯定してくれる唯一無二の人だ。みんなの言う｢変わってる｣は、どこか冷たくて寂しくて、越えられない壁を作る言葉だった。｢私たちは普通だけどあなたは違うのよ｣って知らず知らずのうちに境界線を引かれちゃって、そこに足を踏み入れることは、許されていたとしても私にはできなかった。
彼は境界線を作らない人。｢おもしろいじゃん｣って言って、ずかずかと自分からこっちに足を踏み入れてくる人だった。その時からずっと、絶対に否定的な態度を取らない人。

｢ほら、あれ！｣

公園の入口に少し背の高めな、綺麗な青紫の花。きっと近所の人が植えたんだと思う。周りにも小さくて黄色い花や白い花も植えられてる。

辰｢おーほんとだ、気づかなかったわ｣

｢綺麗だね、名前なんて言うの？｣

辰｢すげーナンパみたいな言い方(笑)｣

植物に話しかける癖も、彼は面白がってくれる。見て見ぬふりされて内心引かれるより、こうして面白がってくれた方がずっといい。

｢たつくんはさ、私のことへんな子って思う？｣

辰｢変な子って、なに？｣

｢…へんな子はへんな子だよ。変わってる子。植物に話しかけるのは普通じゃないって｣

辰｢最近さー、普通ってなんだろうって思うんだよね。おれが普通って思っても、Aにとっては変なこともあるし、Aにとって普通でもおれにとっては変なこともあるし。｣

結局普通とか普通じゃないとか、そんなん存在しねーんだと思うよ。

辰｢それでもAがへんな子って言われんなら、おれもへんな子だし(笑)｣

｢…へんな子カップル？｣

辰｢そー(笑)｣

｢おれも最近トマトに話しかけるし｣という彼に、嬉しくなった。誰がなんと言おうと彼は王子様なのだ。そういうキャラじゃないのはわかってるけど、私にとってはそうなんだ。私のことを見つけてくれて、誰も信じなかった私を包み込んでくれた人。私を｢へんな子｣の呪いから救い出してくれた人。揺らぐことのない肯定を私にくれる人。

｢たつくん、王子様だね。｣

辰｢まーた、何言い出すのよ(笑)｣

だから私は私でいられる