やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ28)

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わがままきいて * Tatsuya.F ページ28

公園にお散歩に行こう、と言ったらその切れ長な目が見たことないくらいぐぐっと開いた。

｢ねえ目そんな開くの？｣

辰｢今そこじゃないでしょーよ！｣

今何時だと思ってるの！と言われて初めて時計を見る。言われてみると確かに夜遅くて、お散歩というにはちょっと暗すぎるかもしれない。それでも私は行きたいけど、そうやって言われるってことは行っちゃダメってことなんだ。行きたかったのにな。

辰｢もう、そんな顔すんなよぉ、｣

｢そんな顔ってどんな顔｣

辰｢え～？…おもちゃ取り上げられた子犬みたいな顔｣

｢…そんな顔してない｣

辰｢してるの。｣

しょうがねえなぁ、と言って腰を上げたたつくん。どうやら行ってくれるみたい。

｢たつくん大好き！｣

辰｢まったく、調子いいんだから｣

ほっぺを潰されたけど、いつもみたいに怒ったりしないでおこう。

自分で言うのもなんだけど、たつくんは私に甘すぎる時がある。アイス一口ちょうだいって言って何口も食べても怒らないし、たつくんがテレビ観てる途中でチャンネル変えても｢おい(笑)｣で済んじゃう。私が逆のことされたらすごくやなのに。私が不機嫌になっても自分は悪くないのに｢ごめんね？｣って言ってくれる。｢逆のことしたら怒るじゃん！｣って怒ったりもしない。怒ってくれてもいいのに、って思う時もあるけど、たつくんが怒ったところを見たら自分がどうなっちゃうかわかんないから、やっぱり優しいたつくんでいてほしい。

外に出たら少しひんやりした風が肌にあたる。まだ夜は肌寒い。すごくしんとしていて音もなくて冷たくて、たつくんが一緒に来てくれてよかったと思った。

｢公園ね、いっぱい見たことない花が植えられてたの。さっき仕事帰りちょっと見えて気になったけど、家帰ったらもっと気になって、｣

いざ外に出てきたら深い夜の静けさに飲み込まれちゃいそうで怖くなって、わざわざそこに彼を連れ出してきたから優しい彼が怒らないか心配になって、言い訳みたいなものが口をついて出てきた。

辰｢なに焦ってんの(笑) いんだよ、たまには深夜の散歩も悪くねぇじゃん｣

心臓の動きが穏やかになって、呼吸も楽になったのがわかった。