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止まります、という独特な声と共に減速するバス。バッグと傘を持って席を立つ。
プシューと音がしてドアが開くと、ダイレクトに聞こえる雨音とまとわりつく生ぬるい空気。梅雨ってなんで梅の雨って書くんだろ。梅みたいに爽やかじゃないじゃないか。
人間は傘を広げたら自ずと前を向いてしまう生き物な気がする。あげた視線の先、バス停の前にあるコンビニの屋根の下に、よく知ったシルエット。こちらに気づいて笑ったと思ったら、持ってる傘を差さずに小走りで駆け寄ってくる彼。
照「おつかれ。」
私の手から傘を抜き取る。さっきまで私の頭のすぐ上にあった傘がすっと持ち上がる。
「え、どうしたの」
照「お迎えにあがりました」
ニコッと笑ってちょっと可笑しそうにそう言った。狭い空間に密着した距離感。妙に恥ずかしくなる。
「…うれしい」
照「あはっ、それはよかった」
照「帰ろ」
1つの傘に入って歩き出す。彼と相合傘なんて、初めてかも。
照「相合傘とか、初めてじゃない?」
「ねえ私も今おんなじこと思ってた」
照「まじ?(笑)」
「まだ初めてあったね」
照「ほんと。俺自分でしといてちょっと緊張してるもん(笑)」
「私も!(笑)」
雨は相変わらずザーザー降りだし、パンツの裾は色が変わるくらい濡れてる。でも、今は、今だけは止んでほしくない。
「家もうちょっと遠かったらいいのに…。」
照「なんで(笑) そんなに相合傘してたいの?」
「んー…」
傘を持つ彼のたくましい腕に手をかけた。まるでこの傘の中だけ違う世界みたいで。私たち2人だけの世界みたいで。時間の流れが外と全然違うみたいで。まだこの中にいたい。少しでも外にはみ出たら置いてかれてしまいそうだから、彼に掴まっていたくなった。
「また、お迎えきてくれる?」
照「もちろん。」
それなら雨も悪くないかも
Sweet dreams * Shota.W→←お迎えにあがりました * Hikaru.I
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エマ(プロフ) - 、さん» ご指摘ありがとうございます! (2020年6月26日 10時) (レス) id: 33d9c37471 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エマ | 作成日時:2020年6月26日 8時