やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ25)

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レジを通して袋詰めをし終わると、いつの間にか彼がいなくなっている。さっきまで私が袋に買ったものを入れていくのをずっと見てたはず。重いものを下にね、って言ったら、なるほどね！と声を上げていた。少し前までは眩しいくらい目立つ金髪の人を探せばよかったのになあ。

大｢Aっ｣

スーパーをぐるりと見渡したら出口付近に彼の姿が。小さく私の名前を呼んで手招きしてる。まるで私の方が迷子になっちゃったみたいに。

｢そっか、そんな時期だね｣

彼の前には色とりどりの飾りがついた笹。これまたカラフルな短冊にはかわいらしい字で願いが綴られている。

｢『ぷりきゅあになりたい』… かわいいね～｣

大｢ほら、これとかおもしろいよ。『げーむたくさんできますように』だって(笑)｣

たくさんのかわいいお願いを覗き見させてもらいながら、ふと思う。私は小さい頃何を願っていたのだろう。いったい何になりたかったのかな。どんな夢を夢見てたの？

大｢Aはなにをお願いする？｣

｢なんだろうね…、なにかな。｣

大｢俺はね、｣

Aとずっと一緒にいれますように。

とかね！と笑う彼の耳は真っ赤に染まってた。
幼い頃抱いた夢はもう思い出せないほど大人になっちゃったけど、今が楽しいから、まあいっか。彼といれば、子ども心を忘れないで豊かな世界で生きていられると思う。子どもの頃の私、ごめんね。あなたの夢覚えてないの。でも、大人の私はあなたが想像できないくらい幸せよ。

｢じゃあ私も、大ちゃんといれますようにってお願いしようかな｣

大｢にひっ、おそろいだね｣

保証はないけど信じたいの