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駅前の小学生 ページ1

「ーーーー……あなた、もしかして立花いづみさん?」
そよぐ夏草を撫でる風のように、優しい女性の声がした。
桜のように柔らかな雰囲気の男の子と、月夜を想うクールな様子の男の子。正反対な見た目の二人を連れて、道をゆく女性に対してかけられた言葉。

女性ーーーーこと、名を呼ばれた立花いづみは、振り返って相手を見やる。

「はい?」
顔を確認すると、声の主であった婦人は「ああやっぱり」と破顔した。
脇に控えていた黒髪の男の子が警戒して、いづみを心持ち庇うよう前に立つと、彼女は少し驚いて
「こら、真澄くん」と背中を小突いている。

「そうよね、MANKAIカンパニーの……監督さんよね?」
「そうです!ええと……何か御用ですか?」

「いえいえ、私ではなく……先ほど、駅の方で『いづみちゃんの新しいお家を知っていますか?』と小学生の女の子に聞かれまして」
ぽん、と手を叩いて夫人は語り出す。思い出すように頬に手を当てて話す様は、まるで様になっていた。

「よくよく話を聞けば、探し人は『立花いづみ』というお方のご様子。そういえば、秋組の公演前に頂いたチラシに、立花さんのお名前がありましてね」
「はあ……」
「MANKAIカンパニーに女性は貴女と、夏組にいる草色のショートヘアをした女の子だけでしょう」

ふふふ、と婦人が笑うと、目を丸くした女性が「えっ!」と声を上げた。揃えるように、隣にいた桜の男の子も「えっ?!」と大声を出した。
「えっ?」
つられて、婦人も固まる。ただ1人、黒髪の男の子だけが、口元に手を当てて静かに笑っていた。

「あっ、いえ……!……咲也くん、もしかしてその女の子って」
「幸くんのことだと思います、多分……!」

顔を揃えてささやき合う2人に、女性はさらに戸惑う。それに気づいた彼女達はあははと下手に笑って、そうですねぇ、と曖昧に返した。

「それで、立花いづみさんは貴女かなって思ったの。チラシは貴方から受け取ってね、壮絶な顔ぶれの中、ひとり可愛い人がいらしたから」
「へ?!ありがとうございます!」

ぽっと彼女が頬に手を当てて喜ぶ。
「それで、女の子とは駅でわかれたのですけど、お知り合いなら電話でもお迎えでも行ってあげられないかしら?
少し泣いていたから側にいてあげたかったものの、私はこれから用事で……」
「ええと、いつ別れましたか?」
「本当についさっき、まだ駅周辺にいるのではないかしら」
「わかりました、探してみますね!」

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作者名:きゅわはんな | 作成日時:2017年5月20日 1時

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