episode13 二日目の朝カレー �� ページ4
殺風景な部屋が彼女の色に染まるのがたまらなく愛しい。
テレビつまんなくなっちゃったの、と明らかに寂しかったんやろなって顔で俺を見上げるその眼。
悪戯心で意地悪を言うとそっぽを向いてしまったから、少し縮まった首に触るとびくっと体を強張らせてマジでやめてと言われた。
言葉のとげとげしさと合ってないその話し方に、少し丸まったその背中に、この場所はどうしても似合わない。
寒い風もこの煙もきみは嫌いなはずなのに、ほわほわと暖かい部屋にいて欲しいのに、何も言わずそばにくる彼女にどうしようもないくらい心が緩んでいくから、思わず抱きしめた。
吸いかけのそれを灰皿に押しつけると、ぎゅっと肩にあったかくて心地いい重みがやってきた。
その頭に顔を当てると、部屋の暖かさが少しだけ残ってて、じわりじわりと伝わってくる。
ここは寒くて、空は暗いのに、きみはやっぱり暖かい。
そろそろ部屋戻ろ、そう呟くと、不機嫌さと嬉しさが混じったような顔で俺を見るから、なんだか勝てる気がしなくてまた彼女の首に手をあててやった。
.
私と、一緒にいるようになって、彼は決して私の目の前でタバコを吸わなくなった。
もともとかなり吸うって言ってたから吸うこと自体は知ってたけど、全くと言っていいほど私の前でそれに火をつけることはなかった。
だから、さっき私が部屋から出てきた時、彼はとっさにその煙を隠すように、少し戸惑うように私を見てた。
ーー俺はほんまは人に気を遣えるような器用な人間じゃないねん。
出会った頃にそう言ってた彼が、こんな目をしてこんな寒いとこで、こんな小さくなってタバコを吸っているなんて、どうやったら愛おしいと、かわいいと、思わずにいられるのだろう。
部屋に置かれた加湿器も、可愛いマグカップも、空っぽだった冷蔵庫に食材や調味料が少しずつ詰められていくのも、柔らかいバスタオルも、じわじわと私の一部みたいになっていくこの感覚を嬉しいと、愛おしいと思わずにはいられない。
抱きしめた体から少し苦そうな匂いがしたけれど、ぐりぐりと私にその頭を押し付けてきたからどうでもよくなった。
「…………なぁ、」
「ん？」
「……明日俺も食べてええ？…二日目の朝カレー」
「…………いいよ」
「…ちょ、顔にやけすぎ」
「…っ！うっさい！」
「…寂しがりAちゃん」
「意地悪けんしろうめ！」
END
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ユウ(プロフ) - 最初からずーっと読ませてもらいました。切ないお話に、涙がでました。賢ちゃんが好きです。 (2019年1月8日 21時) (
レス) id: e0b3508749 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - まりぃさん» まりぃさんご無沙汰してます。すごく遅くなってしまい申し訳ございません(＞＜)Part3の方でリクエストを更新いたしました！めっちゃ今更ですがよかったらご覧くださいませ(＞＜)ステキなリクエストをありがとうございました^ ^ (2018年12月29日 11時) (レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - ゆ〜さん» ゆ〜さん、長い間お待たせしてごめんなさい(TT)リクエストを書かせていただきました^ - ^よかったら読んでみてください^ ^ステキなリクエストをありがとうございました^ - ^また秋山さんのお話書いてみようと思います^_^ (2018年11月25日 13時) (レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 彗桃さん» 彗桃さん^ ^ part1を使った時から見てくださってありがとうございます^ ^読み返してくださってるなんて感激です(TT)恋はサイリウム気に入ってくださり嬉しいです。憧れだなんて言ってくださり私も泣きそうです(TT)切ない系のお話し好きなのでまた書きますね〜^ ^ (2018年11月25日 13時) (レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
彗桃(プロフ) - 久しぶりにpart1から読んで切ない系はほとんど全て泣いてしまいました〜（汗）恋はサイリウムも久しぶりに読んだんですがまた泣いてしまいました（汗）ちゅんさんに憧れを持ちつつも1ファンとして楽しませてもらってます！頑張ってください！ (2018年11月20日 23時) (レス) id: 89eb2c9c11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅん | 作成日時：2018年2月11日 18時
