21話 ページ21
「じゃ、A頑張れよ、また来るわ」
「うん！…あ、そうや」
お店の外まで見送りに来てくれたAちゃんは、何か思い出したように、そう言って入り口近くにあるレジから小さな紙袋を3つ持って来た。
「はい、どーぞ」と丁寧に3人の手にポンポンポンと乗せていく、俺らの頭の上に？が浮かぶ。
「…えっと、これなに？」
「お店特製の手作りクッキーです！」
「いや、悪いって…これ売り物でしょ？」
「いーから！これ食べて、お仕事頑張ってくださいね！」
その笑顔に胸が高鳴ってしまった。
店にぱたぱたと戻って行く彼女をぽけーとみている俺ら。
その手には可愛らしい小さな紙袋。
「…いい子、やなぁ…ほんま」
「Aはいい子やねんて！あー、これで仕事頑張れるわ！」
そう言って劇場への道を歩き出した秋山くん。
ゆずるは黙って手の上にある紙袋を見つめていた。
.
「……あ、忘れた」
劇場の出入り口に戻った辺りでポケットにスマホがないことに気づく。
「賢ちゃんどないしたん？」
「あー、携帯忘れたっぽいねん」
「まじで？Aのとこかな」
時計を見ると秋山くんの出番が近づいてて、和牛の出番はそのだいぶ後。
取りに行って戻って来る時間は十分あった。
「俺取りに行ってくる！」
「じゃあ先に楽屋戻ってるわ！」
「賢ちゃんまた後で！」
先に楽屋に戻る二人に手を振って、さっきのカフェへの道を歩く。
平日なのに人の多い難波は観光客の団体が道いっぱいに広がっていて、
その人混みの中から息を切らして走ってくる彼女が見えた。
「……！……Aちゃん！どうしたん？」
「……あ、川西さん……っ、」
上手く人だかりから抜け出せない彼女の手を思わず引っ張った。
どうしたんやろ、汗かいて、息を切らして俺に駆け寄って来たAちゃんに動揺が隠せない。
「…よかった」
「大丈夫？どうしたん？」
肩で息をする彼女は落ち着いた後、俺を見上げてふにゃりと笑った。
「これ、忘れ物ですよ」
「……あ、これ」
手の上にポンと置かれた自分の携帯に、わざわざ届けてくれたのかと心が揺れる。
「それじゃ！」と戻っていく彼女。
熱くなる顔を左手で隠す。
「…………あかん、これは……もう好き、やな」
俺に向かって走ってくる君を抱きしめたいと思ってしまったから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 514人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゅん(プロフ) - リタさん» リタさん。かなり前にコメントくださってたのに返せなくてごめんなさい。河井さんが実は重要な人物だったりします＾＾更新しましたので読んでくださると嬉しいです。 (2019年9月24日 21時) (
レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - なむなむさん» だいぶ前にコメントくださってたのに返さなくてごめんなさい。嬉しいコメントありがとうございます^ ^更新しましたので読んでくださると嬉しいです。二人の行く末を見守ってください＾＾ (2019年9月24日 21時) (レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
リタ - めちゃめちゃキュンキュンします！健気！でもゆずるくんと今後どうなるのかも気になるし胸が痛くなるけど、それ以上に川西さんがかっこよすぎます更新待ってます(>_<) (2019年2月7日 0時) (レス) id: becfb912c1 (このIDを非表示/違反報告)
なむなむ - 更新待ってます！めちゃくちゃキュンキュンして早く2人の恋がかなってほしいです！ (2019年1月6日 15時) (レス) id: e31a65da9f (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - おこめさん» おこめさんごめんなさい〜(T . T)止まってますがちょっとずつ貯めて更新を企んでます^_^365日ばかりに力が入ってしまい反省です(T . T)更新頑張ります！また遊びに来てください(^^) (2018年12月9日 14時) (レス) id: 722850fb8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゅん | 作成日時：2017年12月19日 9時
