29 JN ページ29
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扉を開けた瞬間、ブワッと細胞一つ一つまでに響き渡るような音の波に包み込まれた。
ピアノの音なのに、パイプオルガンを聴いているような感じがした。
低い音は荘厳に華やかに、
高い音は繊細に軽やかにまるで綺麗なパールの粒のように。
ふわっと身体が持ち上げられ、
そのピアノに近づこうと歩いても地に足がつかなくて、
まるで無重力空間に浮いているような、
そんな心地がした。
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すると突然プツリとその音が消えた。
ハッとして顔を上げると、男の子が僕のことをじーっと不思議そうに見つめていた。
僕はどうやら気付かぬうちに、ピアノのあるところまで来ていたみたい。
JN「…あっ、」
そのピアノの椅子に座っている人を見て僕は驚いた。
この不思議な力を出しているのが僕と同じくらいの男の子だったから。
しかも、それは僕の知っている人物だったから。
「…いいの?今日の主役がこんなところ来て」
JN「え、えっと、…」
その男の子の正体は、同じクラスのミンユンギくん。
ほとんど話したことはないと思う。
どちらかと言うとミンユンギくんは、クラスの中心にいるって感じて、明るくてみんなから人気がある子だった。
YG「まぁぼくも、つまんなかったからにげてきたんだけどね!笑」
音楽一家だと聞いたことはあったが、まさか同い年の子がここまでの音楽を奏でているとは思ってもいなかった。
YG「ほら、パーティーはじまってすぐ、ヴァイオリンひいてた女の人いたでしょ?
あれぼくの母さんなんだ〜」
JN「…へぇ…」
YG「っていうかさ!ソクジンくんもなんかひいてよ!」
JN「…やだよ、ぼくそんなに上手くないよ…」
ほら!と、ユンギくんは、小学生の僕たちには大きすぎる椅子の右半分を僕に明け渡した。
YG「この前、休み時間に音楽室でひいてたでしょ?英雄ポロネーズ」
JN「…え…聞いてたの…?」
YG「うん!クラスのみんなで聞いてたんだよ?」
JN「えっ、…」
YG「ほらすわって!」
僕だって、教養として、一応弾けた。
もちろんユンギくんほどじゃないけど。
YG「ソクジンくんのピアノに合わせてもいいかな」
ソクジンくんはいつも通り普通に弾いてくれたら良いから、とユンギくんはニコッと笑った。
まるで宇宙のようなユンギくんのピアノに乗せて弾くなんて、僕の好奇心を掻き立てないわけがなかった。
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